DARがテレビにもたらす変容とは?ニールセンとビデオリサーチが取り組む デジタル広告の新たな指標「DAR(Digital Ad Ratings)」(後編)
12FEB

DARがテレビにもたらす変容とは?ニールセンとビデオリサーチが取り組む デジタル広告の新たな指標「DAR(Digital Ad Ratings)」(後編)

編集部 2019/2/12 19:02

ニールセンが提唱し、デジタル広告の新たな計測指標として注目される「Digital Ad Ratings(DAR)」。リーチやGRP指標といった従来のテレビ視聴率計測の手法をベースに、Facebookユーザーのデモグラフィック(人口統計学的属性)をパネルデータとして掛け合わせることで、ターゲットとする属性における具体的な到達状況を見ることができる。

日本では、2017年1月6日にニールセンとビデオリサーチが業務提携を発表し、広告主・広告会社・媒体社へのDARの導入を推進している。

前編では両社連携の経緯にはじまり、ターゲット層への具体的なリーチ率を可視化できるDARの強みについて話を伺ってきた。今回の後編では、DARの浸透によって見込まれる広告業界・メディアの変容について掘り下げていく。

【対談者】
宮本 淳氏(ニールセン デジタル株式会社 代表取締役社長)
五十嵐 達氏(株式会社ビデオリサーチ インタラクティブ 取締役副社長)

■DARがテレビにもたらす変容

──ネットに接続されたデジタルテレビの数が急速に浸透しています。テレビ広告の世界でもDARは活用できるのでしょうか?

宮本氏:基本的にアドサーバー(インターネット上の広告配信サーバー)から配信されている広告であれば、DARによってFacebookのデモグラフィックと結びつけることができます。ネットに接続されたデジタルテレビのアプリで視聴される広告においても、インプレッションの計測は可能です。

五十嵐氏:広告にしてもテレビ番組にしてもいまやいろんな伝送路があるので、これらに対応できるようビデオリサーチ側でも取り組んでいます。マルチスクリーンやオンデマンド配信といった視聴スタイルにどう対応するかといったところはまさにこれからの取組みのひとつとなっていくでしょう。

──DARによって、放送局における広告の効果測定のしかたも変化していくと思われますか?

五十嵐氏:放送局に限らずデジタル展開しているパブリッシャーは、DARの登場によって、自社デジタルメディアに出稿した広告がどのような効果をもたらしたかを第三者が測るスタイルが広まっていくかもしれません。またこれに加え、自社のデジタル媒体のパワーを測る指標も使われるようになっていくでしょう。

宮本氏:現在ニールセン デジタル社とビデオリサーチグループが共同で推進している『DCR(Digital Content Rate:デジタルコンテンツ視聴率)』という計測方法では、ウェブページやアプリにおける番組やエピソード(放送回)レベルの動画視聴率や、テキストを中心とする静的コンテンツの視聴率を全数レベルで測定するソリューションを提供しています。

すでにアメリカでは『TCR(Total Content Ratings:トータルコンテンツ視聴率)』といって、放送もデジタルコンテンツもまとめてひとつの指標で効果を測定する流れとなってきています。

■「媒体の強み」の可視化は「業界全体の健全な成長」につながる

──DARやDCRといった新たな指標は、広告媒体そのものの価値を可視化する、ある意味とても刺激的な試みであると感じます。ある意味「ごまかしが効かなくなる」というリスクもはらんでいるように感じますが、業界の反応はいかがでしょうか。

宮本氏:フェイク広告や違法コンテンツへの掲載問題に代表されるように、昨今デジタル広告の信頼性に対して関心が高まっていると感じます。

広告主側でもガイドラインを設けるなど、アドベリフィケーション(広告審査)における対策が積極的に進められていますが、この段階でできることは『この媒体・広告枠は安全です』というところしか担保することができません。媒体や広告の価値という意味で考えたとき、やはり『うちの媒体・広告はこういったターゲット層にこれだけ届きます』というものがわかるようにしていかなければならない。本当の意味で広告主に寄り添うためには、自社のオーディエンスデータが他社と横並びで表現できる指標が大事であると考えています。

“価値”がはっきり見えてしまうことで、弱みとして見えてしまう部分もこれから出てくるでしょう。しかし、そもそも広告出稿の前提として『効果のわからないものにお金は出せない』と思うのです。

──たしかに、これまでのデジタル広告の出稿は、媒体が公称するPVやユニークブラウザくらいしか判断基準がありませんでした。

宮本氏:結局のところ、媒体のPVやユニークブラウザといったものは、それぞれ自分が一番有利に見える物差しを使っているのが実態でしょう。F1層ターゲットの広告キャンペーンの場合、そもそもF1層にあたる『20歳から34歳の女性』は日本国内に1,000万人程度しかいないのに、ここで『1億UB』という数字が出てきても説得力は薄いのではないでしょうか。それよりも『F1の3割にリーチできる』と訴求したほうが、はるかに意味を持つと思います。

自社の訴求するメディア特性を発信していくためにも『他社と比べて自社はこういうところが強みだ』がわからなければいけない。テレビだけでなくデジタルにおいても、広告媒体である以上、横並びに比較可能なうえでの差別化が業界全体の健全な成長につながると思うのです。

五十嵐氏:DARを用いた効果測定が浸透してきた2018年は、私たちにとって『デジタル広告指標元年』であったと考えています。この先広告会社も含めて普及が進むなかで、これまでのCTR(Click Through Ratings:広告クリック率)と同じような感覚で「DAR」というワードが使われ、一般名詞として業界の中で定着していってほしいと願っています。

「実際のところ、この広告はターゲットにはどのくらい届いているのか」──デジタル広告にとって根本の問題であった効果測定の透明性という“聖域”に大きく切り込むニールセンとビデオリサーチの取り組みから、テレビを含めた広告業界全体の構造改革が始まっていくのかもしれない。

■データ連携・オーディエンスベースの効果測定の最先端がわかる「VR FORUM 2019」

2月13日(水)・14日(木)東京ミッドタウンで開催される「VR FORUM 2019~Data Orchestration~(以下 VR FORUM)」では、今回の議題となったDARをはじめとするオーディエンスベースの効果測定の最先端に触れることができる。

五十嵐氏:今回の『VR FORUM』では、データ単体そのものに限らず、データの定義や連携、設計といった部分を通して問題解決を測る方法をご案内していきたいと考えています。今回お話ししたニールセン社とビデオリサーチとの連携の座組についてもお話しする予定です。

2日間のプログラムのうち、14日(木)に開催するセッション『新聞コンテンツのデジタルメディア価値』では、ビデオリサーチの松本圭一がモデレーターとなり、新聞業界の有識者にお集まりいただき、新聞媒体を題材として挙げながら、旧来のマス媒体のデジタル化のなかでさまざまなデバイス・コンテンツを横断した効果測定を行う指標としてDCRのソリューションをご案内します。

あわせて、ニールセン社とビデオリサーチとの座組で展開する取り組みについてもいくつかのコマでお話をします。
2日間を通して、テレビに対する取り組みはもちろん、テレビ以外のメディアも含めた問題解決について、さまざまな事例をご紹介することができると思いますので、ぜひ足をお運びいただければ幸いです。

「VR FORUM 2019~Data Orchestration~」は、2月13日(水)・14日(木)東京ミッドタウンホール&カンファレンスにて開催予定。現在、公式サイト(https://www.videor.co.jp/vr_forum2019.htm)にて参加登録を受け付けている。

“視聴率調査の雄”ニールセンとビデオリサーチが取り組む デジタル広告の新たな指標「DAR(Digital Ad Ratings)」(前編)

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