あらゆるデータを有機的に設計し、活かすヒントを〜「VR FORUM2019 Data Orchestration」基調講演レポート
14MAR

あらゆるデータを有機的に設計し、活かすヒントを〜「VR FORUM2019 Data Orchestration」基調講演レポート

編集部 2019/3/14 09:28

2019年2月13日(水)~14(木)の2日間にわたり、東京ミッドタウンホール&カンファレンス(東京都港区)において、ビデオリサーチ社主催の「VR FORUM2019 Data Orchestration」が開催された。世の中に溢れるデータを、いかにマーケティングに活用すべきか。その課題に対し、データの品揃え、定義、収集の仕方などを有機的に設計する「データオーケストレーション」を提言。実践のためのヒントを探る多数のセミナーが開かれた。今回は、初日に行われた基調講演についてレポートする。

■テレビコンテンツの視聴形態は分散したが、視聴者は増えている

基調講演のトップバッターを務めたのは、一般社団法人日本民間放送連盟(以下、民放連)副会長であり、株式会社東京放送ホールディングス(以下、TBS)代表取締役の佐々木卓氏である。掲げたテーマは「“Re-invent”テレビ再創生」。生活者の視聴行動が劇的に変化し、通信の世界では“5G”に突入しようとしている今、トラディショナル・メディアであるテレビを担う者は何をすべきか。民放連のスタンスをとりつつ、TBS側の見方も交えて語った。

まず、現状を把握するため、佐々木氏は生活者のメディアの接触時間について触れた。2005年以降の調査では、テレビの接触時間は漸減している。しかし、各メディアと比較したとき、それでもテレビが最長であることを強調する。さらに、伸びているPC・スマートフォンについても、テレビ由来のコンテンツが視聴されていることに言及。「生活者は、自分にとって都合のいい媒体を使っていると言える」と、テレビコンテンツの力強さを強調した。

そのようなテレビの価値を正確に捉えるため、リアルタイム視聴と7日間のタイムシフト視聴を組み合わせた新たなスポットCMの取引指標である「P+C7」が注目を集めていること、民放公式テレビポータル「TVer」のアプリ累計DL数や、10代の認知率が増加傾向にあることにも期待を寄せた。

TVerアプリDL数推移

講演では、世界のテレビを取り巻く状況についても触れられた。この5~6年のうちに視聴者の1/3が減少したと言われる中国。いわゆる「GAFAN」といった巨大プラットフォームの台頭でデジタルコンテンツに押されているヨーロッパ。

テレビにとって悲観的な印象も受けるが、現地の関係者の声は非常にポジティブだ。「大掛かりなテレビ番組で視聴者を集めることも、デジタルのおかげでターゲットを絞り込めるようにもなった」「視聴形態は分散しているが、視聴者はむしろ増えている」という意見があった。近年、デジタル広告は玉石混交の状態で、GDPR(EU一般データ保護規則)などの規則が設けられるなど、リスクの大きさも取り沙汰されている。

そのようななか「テレビの信頼性とリーチ力は改めて見直されている」とのこと。二者択一ではなく、両者をうまく融合させること。そのためには、テレビの価値を評価する視聴データがますます重要になると示唆した。

■メガ・コンテクストを圧倒的なリーチで生むテレビCMに再評価の気運

生活者に届ける広告の現状と課題については、日本アドバタイザーズ協会専務理事、鈴木信二氏が講演を行った。鈴木氏は、味の素株式会社で長年マーケティングに携わり、テレビ広告のマスに対する威力を実感していたという。

その一例として、ロングセラー商品が、テレビ広告によってブランドイメージをリポジショニングし、ターゲットを拡大してきた事例を紹介。テレビメディアが、市場を創造するパワーを持つことを訴えた。

「広告は、メガ・コンテクストで社会を変えうる。生活者も新しいメガ・コンテクストを望んでいる」と鈴木氏。メディア、広告会社、広告主が生活者のインサイトに届くまで悩み抜くことがマス広告の価値を生み出すと示唆する。

その一方で、広告業界に高まるデジタル広告のニーズと現状についても触れられた。デジタル広告の利点は、効果測定と精緻なターゲティングが可能なこと。ABテストなどを使って、伝えるメッセージやイメージを検証し、生活者のコンバージョンの意向別に広告を発信できるようになった。

そのようななか、マスであるテレビCMは何をするか、問われる時代になっていると課題を投げかけた。その一つのアンサーとして、鈴木氏は「家族視聴」を挙げる。たとえば、子どもが親と一緒に自動車や化粧品のテレビCMを視ることで、将来の見込み顧客になる可能性も捨てきれないとのこと。「“購入したら”だけではなく、“ブランド体験したら”顧客とみなしてよいのではないか」と鈴木氏は提言する。

また、近年デジタル広告は、アドフラウドや個人情報保護の観点から、その“質”が問題視されつつある。広告主側も、テレビ広告のパワーや質に気づき始め、テレビの出稿を増やしたいという揺り戻しが起こっているとのことだった。

■「テレビ市場」から通信と放送がコラボする「モニター市場」へ

しかし、デジタル広告が急速に進化し続けていることも看過できない。日本インタラクティブ広告協会の副理事長であり、博報堂DYメディアパートナーズ代表取締役社長の矢嶋弘毅氏が務めた基調講演では、デジタル広告の未来について触れられた。

インターネットによるデジタル広告は、ほぼ5年のタームで大きな変革を遂げているという。次世代通信規格5Gの運用を目前に控えた今は、大転換の真っ直中にあると指摘。特に動画広告市場は、2016年から2018年にかけて2倍以上になっており、2024年には5,000億円に迫る規模になると試算している。

通信トラフィックが増加し、臨場感あふれる動画がインターネットで体験できるようになったとき、生活者の視聴行動にはどのような変化が起こるのか。その考証の足がかりとして、矢嶋氏は2019年の箱根駅伝のテレビとネットの同時配信を上げた。

ビデオリサーチ社の調査したシングルソースデータによると、テレビから視聴が始まり、その後ネットに移るも、ゴールの瞬間はテレビに戻ってくるという傾向が見られたとのこと。また、インターネットで視聴した人の70%は、テレビも視聴したという結果が出たという。

矢嶋氏は、「ネットでおもしろいものは、テレビでも見る可能性がある。それに相まって視聴が最大化されたのでは?」と指摘。通信技術の進化、デバイスの進化により、スポーツ、エンターテインメントなどさまざまな領域で、放送と通信の好循環が加速すると予測した。ここに、テレビの大転換のチャンスを見ているという。

また、すべての産業がインターネットとつながる「第四時産業革命」が進むと指摘。世界大手の生活消費材メーカーP&G社が、IoT製品群を活用したダイレクト・トゥー・コンシューマに乗り出すなど、その予兆はすでに現れているとのこと。そのとき、インターフェースとなるものの多くは「モニター」であることに矢嶋氏は着目。

今後、通信インフラの圧倒的な進化と、IoTの浸透によって、自動運転の車の窓、次世代の家電、身につける衣服など、街のあらゆるものが通信と放送につながったモニターになる可能性を示唆。「テレビ市場はモニター市場になる」という視点で、ビジネス・スキームを捉え直す必要を述べた。

今後は、人を引きつける優良なコンテンツ、エクスペリエンスを生む技術を掛け合わせて、テレビ業界とデジタル業界がコラボレーションして「モニター市場」を作っていくことが必要だと矢嶋氏。マスとデジタルの本格的な融合が求められていると提言した。

■“人”起点のデータと、標本データを折り合わせることが肝要

各基調講演を通じて、テレビの力を関係者が感覚的に理解し、再び期待が高まっている現状と、今後ますますデジタルとの融合が求められることが見えてきた。

最後の基調講演を務めた株式会社ビデオリサーチ代表取締役社長の加藤讓氏は、テレビメディアの価値を客観的に伝える使命を改めて痛感していると語った。

また、生活者の視聴形態が多様化し、テレビコンテンツがさまざまなメディアで享受できることを踏まえ、「テレビ」を広義に捉え、次世代のメディア接触のあり方や測定方法を考えなくてはならないと見解を述べた。そのとき重要になるのが、メディアの違い、スクリーンの違いに左右されない“人”起点の考え方。これがマーケティングの最前線になるという見方を示した。その実現に向けて、ビデオリサーチ社でも、機械学習のアルゴリズムの開発に着手しているという。

ただ、“人”起点は、究極の極小最適で、そこには危険性もあると指摘。消費者の選択の豊かさが損なわれ、アルゴリズムによって機械的に判断された消費を、消費者が気づかずに選んでしまう可能性もあるからだ。そのため、旧来の標本調査による全体俯瞰のデータの重要性も改めて強調。“人”起点のデータと標本データがどこで折り合うのか。ビデオリサーチ社が提言する「データオーケストレーション」のゴールはそこにあると述べた。

これらの基調講演を受けて、「VR FORUM」2日目は、「テレビ」「メディア」「ソリューション」の分野で、「データオーケストレーション」を念頭に置いた21のセミナーが開催された。各セミナーについては、順次レポートしていく。

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