「TVer・radikoにみるコンテンツと広告の関係」Adobe Symposuimレポート
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「TVer・radikoにみるコンテンツと広告の関係」Adobe Symposuimレポート

マーケティングライター 天谷窓大 2019/9/20 07:00

2019年7月24日、ANAインターコンチネンタル東京にて、アドビシステムズ株式会社主催による顧客体験マネジメントをテーマにしたカンファレンス『Adobe Symposuim 2019』が開催。様々な専門セッションが行われた中から、『TVer・radikoにみるコンテンツと広告の関係』の模様をレポートする。パネリストは株式会社電通の布瀬川平氏、株式会社TBSテレビの城間弘光氏、株式会社radikoの岡田真平氏。モデレーターをアドビシステムズ株式会社の伊藤維氏が務めた。

(写真左から)アドビ システムズ 伊藤 維氏、radiko 岡田真平氏、TBSテレビ 城間弘光氏、電通 布瀬川 平氏

■TVerとRadikoが提供する「ユーザー体験」

セッション冒頭、今回のカンファレンスのテーマにちなんで城間氏、岡田氏がTVerとradikoそれぞれが提供するユーザー体験について述べた。

運営者を代表してTVerの現状を述べるTBSテレビ城間氏

TVerの2019年7月現在の月間再生数は1億回、UU(Unique User:実ユーザー数)は1350万人に達している。全体の視聴者構成比は女性が多く。F1層(20歳〜34歳女性)とF2層(35歳〜49歳女性)が全体の35%強を占めているという。

「TVerが提供する体験は、時間と場所にとらわれずテレビを視聴可能にすること。若い人たちの多くがスマートフォンでコンテンツを見る今、放送局のコンテンツもスマートフォンで見られるようにしようという思いからスタートした」(城間氏)

radiko 岡田真平氏

民放連加盟のラジオ局101局中93局とNHK、放送大学を配信するradikoは、日間のUU数が約135万〜145万人で推移。現在地のエリア外をふくめた全国の放送を聴取できる月間課金サービス『radikoプレミアム』の契約者数は2019年6月時点で約62万人に達している。

「radikoもTVer同様『若者対策』からスタートしたサービスだ。いまや誕生日にラジカセを買ってもらうような若者はいなくなり、かわりにスマートフォンでなんでも楽しむ時代。最近は建物の高層化や電子機器の増加によってラジオの電波環境も悪くなってきた。ラジオの聴取環境を改善し、『いかにラジオを聴いてもらうか』を考えたすえ、専用端末ではなくPCやスマートフォンでラジオを聴けるようにする仕組みとして誕生した」(岡田氏)

■TVerとradiko 電波媒体との「ユーザー層の違い」

若者層への対応を前面に打ち出したTVerとradiko。電波媒体との「ユーザー層の違い」についても両者は言及した。

「同じ番組でも、テレビでの放送より(配信では)若い人たちが見ている。2019年4月から6月にかけて放送されたドラマ『私、定時で帰ります』(TBSテレビ)を例にとると、放送ではF3層(50歳以上女性)の視聴者がもっとも多いが、TVerをはじめとしたキャッチアップ配信ではF1(20歳〜34歳女性)、F2(35歳〜49歳女性)層の視聴層が約半数を占めている」(城間氏)

「(グラフの結果は)同じコンテンツであってもデバイスが変わるとこんなに変わるんだ、という大きな発見だった」(布瀬川氏)

一方、radikoでは「20代以下の男性と40代以下の女性のシェアが(電波による聴取層よりも)多い」(岡田氏)結果が出ているという。

「radikoのユーザーにアンケート調査したところ、全体の約4割がradikoをきっかけにラジオを聴き始めたり、ふたたびラジオを聴き出したりするという回答だった。最近では(現在地エリア外の放送が聴ける)エリアフリー機能や(過去1週間の放送をさかのぼって聴ける)タイムフリー機能を目当てに入ってくる人も多い」(岡田氏)

これまでラジオに親しみの無かった層が目当ての出演者の番組を聴くためにradikoを使い始めるケースも見受けられるという。

「(東海広域圏をサービスエリアとする)東海ラジオでは人気YouTuberの『東海オンエア』がパーソナリティを務める番組を現在放送しているが、彼らのファンが(自分たちの地元以外の放送を)聴くためにエリアフリーに加入している」(岡田氏)

■「広告媒体」としてのTVerとradiko

若年層からのユーザー流入が多く、これまでの電波媒体とはちがった価値が見いだされていることが明らかとなったTVerとradiko。それぞれの「強み」を活かし、新たな広告媒体としての活用も模索されている。

「TVerの特長は、コンテンツに対するエンゲージメントの強さ。ドラマコンテンツに至っては、完全視聴率(冒頭から終盤まで離脱せず視聴する割合)が直近で9割を越えている。つまり、いったんコンテンツの視聴を始めれば、途中で広告が流れていても離脱しないことを意味する。広告によってコンテンツ体験が毀損されることなく『ちゃんと広告も見られている』というのは大きな価値だ」(城間氏)

布瀬川氏

「コンテンツや媒体同士で『(ユーザーのアテンションの)奪い合い』が起きているなか、TVerではコンテンツと広告が(ユーザーのアテンションを奪わず)共存し、横並びできている。『自分の好きなコンテンツの合間に流れる』という構図であることも大きい」(布瀬川氏)

布瀬川氏は、広告への接触による認知の向上(リフトアップ)度の観点からもTVerの優位性を説いた。

「動画媒体における広告認知の効果を比較したデータでは、TVer(グラフ上では『PrV』表記)上の広告による認知度のリフトアップ率は38.9%ともっとも高い水準だ。クオリティが保証された(テレビ局の)コンテンツの間に流れる広告は認知効果も高いことがわかる。先に述べられたユーザー属性の統計も踏まえても、若年層に広告効果を伝えられるメディア(としてのTVer)の存在は広告主にとっても重要だ」(布瀬川氏)

一方、音声メディアであるradikoは、2018年7月からオーディオアド(音声広告)の実証実験を開始した。番組中のCM枠のなかで一律同じ内容が流れる通常のラジオ放送と異なり、radiko上ではユーザーごとにカスタマイズされたCMが流れる。

「広告配信先のターゲティングには、radikoの有料会員データとビデオリサーチ社のシンジケートデータ『ACR Radio-Pro(全国7地区のラジオリスナープロフィール集計データ)』を使ってターゲットを切り出し、広告を配信している。今後は位置情報などのデータも活用の選択肢に入れていきたい」(岡田氏)

■「新たなユーザー体験」に向けて

今後、ユーザー体験のさらなる充実に向けてどのようなことが考えられているのか。セッションの終盤、各社が展望を述べた。

「TVerはさらなる視聴体験の充実に邁進する。まずはコンテンツを増やしていくことが至上命題だ。未配信の番組を減らし、(コンテンツの充実によって)増えたリーチに応じて広告在庫を増やす。(媒体が変わっても)安心、信頼できる(テレビ)コンテンツを伝える環境を作るという姿勢は未来永劫変わらない。キャッチアップサービスの登場で放送局の(電波媒体における)視聴時間をスマートフォンが奪っているのではないか、という意見もあったが、そうではなく単にテレビデバイスで番組が視聴される時間が減ったというだけ。新たな視聴形態を見い出し、そこにコンテンツを出せば(視聴者に)見てもらえると考えている」(城間氏)

「現在、コネクテッドカー(機器がネットワーク接続された自動車)への搭載を想定し、カーナビゲーションシステムと接続してラジオを楽しめる『radiko auto』というサービスを展開している。また大容量通信の時代を見据え、現状の音質(48kps)を超える高音質での配信や、ワールドワイドへの対応も視野に入れている」(岡田氏)

電通の布瀬川氏は、広告主側と放送局側両方の立場を踏まえ、次のように述べた。

「私たち(広告代理店)の役目は、『広告主に媒体としての効果を理解してもらう』こと。TVerやradikoを、広告主にとってマーケティング活動に適した媒体へと育てていきたい。その結果生まれた広告売上を媒体に還元してよりよいコンテンツづくりにあててもらい、さらに広告が増えるという好循環を作っていきたい」

生活者のライフスタイルにあわせた柔軟な媒体づくりが求められるという考えが各社ともに共通して感じられた一方で、これまで「放送局」として作り上げてきたコンテンツに対する絶対的な自信も垣間見えた今回のセッション。引き続き動向に注目していきたい。

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