電通、「2019年(平成31年)日本の広告費」を発表
編集部
株式会社電通(本社:東京都港区)は、日本の総広告費と、媒体別・業種別広告費を推定した「2019年(平成31年)日本の広告費」を発表した。ここでは、その一部を抜粋して内容を紹介する。
■2019年 日本の広告費の概況

2019年の総広告費は、新たに「物販系ECプラットフォーム広告費」と「イベント」領域を追加推定し、通年で6兆9,381億円。なお、前年同様の推定方法では6兆6,514億円(前年比101.9%)となり、8年連続のプラス成長だった。
インターネット広告費は、テレビメディア広告費を超え、初めて2兆円超えを記録。デジタルトランスフォーメーションがさらに進み、デジタルを起点にした既存メディアとの統合ソリューションも進化するなど、広告業界の転換点となった。
媒体別にみると、「新聞広告費」(前年比95%)、「雑誌広告費」(同91%)、「ラジオ広告費」(同98.6%)、「テレビメディア広告費」(同97.3%)を合計した「マスコミ四媒体広告費」は、前年比96.6%となった。「インターネット広告費」(同114.8%)は、前年に続き運用型広告費が大規模プラットフォーマーを中心に高成長しており、「マスコミ四媒体由来のデジタル広告費」(同122.9%)がインターネット広告費よりも高い成長率となった。「プロモーションメディア広告費」(同107.5%)は、「屋外広告」(同100.6%)、「交通広告」(同101.8%)が増加。
業種別(マスコミ四媒体、衛星メディア関連は除く)では、「官公庁・団体」(前年比129.9%)、「エネルギー・素材・機械」(同108.1%)、「食品」(同100.2%)の3業種が増加した。

■媒体別広告費の概要(一部抜粋)
媒体別にみると、2兆1,048億円(前年比119.7%)と6年連続で2桁成長の「インターネット広告費」などが市場をけん引した。
「マスコミ四媒体広告費」は2兆6,094億円(同96.6%)と、5年連続の減少。「プロモーションメディア広告費」は、デジタルサイネージ化が進む「屋外広告」「交通広告」と、広告業が取り扱うイベント領域を拡張推定した「イベント・展示・映像ほか」(改定項目)が増加し、2兆2,239億円(同107.5%)だった。
●テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連):1兆8,612億円(前年比97.3%)
【地上波テレビ:1兆7,345億円(同97.2%)】
・地上波テレビは、長梅雨・冷夏・台風といった天候不順や自然災害、また米中貿易摩擦による厳しい経済状況の影響を受け、通期で前年割れとなった。
・番組(タイム)広告は、前年に続きスポーツが貢献。「世界水泳韓国・光州2019」「ラグビーワールドカップ2019」「第17回世界陸上競技選手権大会」「第2回世界野球プレミア12」「2019世界柔道選手権東京大会」などのスポーツ番組が牽引し、ほぼ前年並み。地域別では、通年で基幹8地区中、大阪、名古屋(3年連続)、静岡(2年連続)の3地区が前年超えとなった。
・スポット広告は、軽減税率関連やキャッシュレス関連出稿が増加。一方、スポット全体としては、天候不順、自然災害、消費税率変更に伴う出稿控えや米中貿易摩擦の経済的影響などにより、3年連続の減少となった。地域別では、通年で全32地区が前年を下回った。
・業種別では、「官公庁・団体」「金融・保険」などが増加。一方、「情報・通信」「化粧品・トイレタリー」などが減少した。
【衛星メディア関連:1,267億円(同99.4%)】
・BS(無料民放8局、933億円、同101.1 %)は増加、通販関連の減少が顕著だったCSやCATVはマイナス傾向となった。
●ラジオ広告費:1,260億円(前年比98.6%)
・前年に続き減少したものの、横ばい傾向と言える。デジタルと組み合わせた新しい広告手法が進化している。
・「情報・通信」ではシニアのスマートフォン乗り換え促進広告などが増加した。一方、「金融・保険」では、損害保険関連において前年出稿の多かった被災地お見舞い広告の減少で、反動減。
●インターネット広告費:2兆1,048億円(前年比119.7%)
【インターネット広告媒体費:1兆6,630億円(同114.8%)】
・インターネット広告費のうち運用型広告費は、1兆3,267億円(同115.2%)。前年に続き、大規模プラットフォーマーを中心に高成長となった。大規模プラットフォーマーではない独立した専門型プラットフォーマー(ニュースキュレーションメディアなど)も、前年同様、運用型広告の機能拡充を継続し大規模プラットフォーマーとの連携を深めた結果、広告費が増加。
【マスコミ四媒体由来のデジタル広告費:715億円(インターネット広告媒体費の一部)】
・マスコミ媒体社のデジタルトランスフォーメーションがさらに進み、インターネット広告費より高い成長率となった。長年蓄積してきた非デジタル領域でのコンテンツ制作やユーザーへのリーチ(到達率)に関する知見が、デジタル領域においても広く活用されている。
・新聞デジタル:146億円
新聞本紙を基盤とするコンテンツの信頼性により、前年に続きブランドセーフティを意識する広告主からのニーズが高かった。また、コンテンツ配信などソーシャルメディア事業社との協業もみられ、新しい試みが始まっている。新聞コンテンツのサブスクリプションモデル拡充など、デジタル事業の変革も進行中。
・雑誌デジタル:405億円
デジタル領域での事業拡大に伴い伸長。特に良質なコンテンツを背景に、タイアップ広告、動画広告などが大きく拡大。また出版社は、デジタル起点の新事業(インフルエンサーの育成、コンテンツスタジオ設立、スタートアップ企業との協業など)も積極的に進めている。
・ラジオデジタル:10億円
radiko「ラジコオーディオアド」(リスナーの年代や性別といった属性でターゲットをセグメントすることが可能な広告モデル)などが増加した。位置情報など各種データ連携を背景に、地上波ラジオとの組み合わせ、ソーシャルメディアとの連携企画など、より複合的な広告活用が進行している。
・テレビメディアデジタル:154億円
前年100億円を突破の「テレビメディア関連動画広告」が150億円(同148.5%)と、依然として活発な成長を見せている。テレビ受像機向けアプリ(インターネットに接続されたテレビ画面上で使われるアプリ)での配信も始まった民放公式テレビポータル「TVer(ティーバー)」など、地上波テレビ由来のコンテンツ力を背景に伸長、スポーツコンテンツのライブやハイライト配信なども増加している。
【インターネット広告制作費:3,354億円(同107.9%)】
・アドフラウド(広告詐欺)や個人情報保護の観点から企業の広告活動を自社サイト(オウンドメディア)を基点に行う動きが進み、自社サイトと連携させてのソーシャルメディア活用も増加した。
・大規模プラットフォームごとの特性に合わせた企画やキャンペーン訴求も増加。
・コミュニケーション全体の設計、効果の可視化やPDCAなど関連作業も増加した。
■業種別広告費(マスコミ四媒体〈衛星メディア関連は除く〉のみ)について
消費税率変更に伴う各種関連広告などが増加した「官公庁・団体」(前年比129.9%)、電力・ガス自由化関連広告などが増加した「エネルギー・素材・機械」(同108.1%)や通販系サプリメント広告などが増加した「食品」(同100.2%)の3業種が増加となった。