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世界の番組フォーマット流通ビジネスをリードする権威ある賞で日本の視聴者“巻き込み”型番組が高い評価を受けた。制作したのはABCテレビ。NBCユニバーサル・フォーマットと共同開発したバラエティ番組『シークレットゲームショー』が国際的なコンテスト「インターナショナルフォーマットアワード 2021」で最優秀賞に輝く、快挙を成し遂げたのだ。フランス・カンヌの商談テーブルから始まったという国際共同開発の道のりを前編に続き、ABCテレビコンテンツクリエイト局制作部所属の桒山哲治プロデューサーと土井長慶宗ディレクターの2人に話を聞いた。

■一流プレイヤーの登竜門で最優秀賞を獲得する

ABCテレビ発のバラエティ番組『シークレットゲームショー』が世界的な評価を受けたのは、世界最大手のコンテンツ業界メディアのC21Media（イギリス）らが主催する「インターナショナル・フォーマット・アワード2021」だった。世界有数の業界のトッププレイヤーが参加するC21Mediaコミュニティによって、オンラインで応募、審査、投票が行われ、世界最大級の番組コンテンツ見本市MIPTV期間中にフランス・カンヌ現地で発表される2006年から続く恒例の賞である。

現在、同アワード主催者の顔ぶれにはC21Mediaのほか、業界団体のFRAPA（オランダ）、業界教育機関のEntertainment Master Class（ドイツ）そして、MIPTVのフォーマットビジネス専門マーケットMIPFormats（フランス）が並ぶ。スポンサーもイギリスBBCスタジオズ、ITVスタジオなどヒットメーカーだらけ。筆者も過去にアワードの末席に加わったことがあり、番組フォーマット流通ビジネスの一流プレイヤーとして認められるための登竜門的な場であることを実感した。

今年はコロナ禍を理由に授賞式もオンライン上で行われたが、日本時間の2021年４月13日深夜に同アワード全11部門のひとつ、コメディ部門で日本、フランス、イギリス、アメリカからノミネートされた６作品からABCテレビ発番組が最優秀賞作品として、名前が読み上げられた。日本からは日本テレビがアメリカのThe Story Labと共同開発したバラエティ番組『9 windows』も有力候補としてノミネートされていたが、今回、最終的に最優秀賞の称号を手に入れたのはABCテレビだった。

ABCテレビ発のバラエティ番組フォーマットが世界に認められたことに桒山プロデューサーは「めちゃくちゃ胸が張れること」と前置きしつつ、実績を作ることができた理由を冷静に分析もしていた。

「国内で放送して、数字を取って、番組を続けるための番組作りも大事なことですが、日本のテレビ屋は海外セールスを前提に番組を作ってはいないことは確か。今回は海外のどこの国に持っていっても（ローカライズ）展開できることをメインに考えて作ったからこそ、認められたものだと思っています。複雑な言語化できないものは排除し、シンプル・イズ・ザ・ベストを追求しているような番組作りでした」。

さらに、タッグを組んだNBCユニーバサル・フォーマットは世界の番組流通市場を知り尽くす。そんなNBCユニーバサル・フォーマットの賞レースも活かすプロモーションとマーケティング力も借りながら、ローカル局としては先駆けてフォーマット番組ビジネスに取り組み続けていたことが結果に現れた。

■欧米の大味とABCテレビの“なにわ”スタイルを組み合わせた国際共同開発

受賞実績のみならず、国際共同開発のプロセスから新たな学びを得ている様子でもあった。土井長ディレクターは「前向きなモノ（番組）づくりの議論があった」と語る。

「日本の番組企画会議は『そうか、でも…』と続いていく会話がどうしても多い。あらゆるリスクを潰して、練っていくやり方です。それに対して、NBCユニーバサル・フォーマットはABCテレビがアイデアを出すたびに『いいね！クールだね！じゃあ、世界で売れるためにこうしてみるのはどうかな？』とまずは認めてから、提案するという企画の練り方です。一方的に『そんなボケやツッコミは海外ではウケない』と押し潰されていたら、実現できなかったと思います」。

欧米らしい大味スタイルのNBCユニーバサル・フォーマットと、日本のABCテレビの“なにわ”スタイルの相性の良さが助けられたようだ。これに桒山プロデューサーも同意する。

「“ド”バラエティを作り続けているという自負があります。バラエティを作ることに関して『お任せください』と胸を張って言えます。こちらでは考えつかないようなNBCユニーバサル・フォーマットのアイデアに、我々らしい緻密なバカバカしさを加えて、理想的な共同制作を進めることができました。また今回、言葉の壁が感じられなかったのは制作現場も知る通訳の方のおかげ。NBCユニーバサル・フォーマットとやり取りするたびに、的確な日本語に訳してくれました」。

最後に「まだまだアイデアは湧き出る」と桒山プロデューサーと土井長ディレクターが共に力強く答えていた。「ABCテレビは『新婚さんいらっしゃい！』に『探偵！ナイトスクープ』、『大改造!!劇的ビフォーアフター』『ポツンと一軒家』など、素人さんを巻き込む番組作りにずっと拘り続けてきました。今回のNBCユニーバサル・フォーマットとの『シークレットゲームショー』もそれの延長線上にあります」。これこそ、世界的な評価を得た理由のベストアンサーではないだろうか。

なお、『シークレット ゲームショー』は受賞を記念して今月5月1日に関西ローカルで再放送され、見逃し配信サービスTVer・GYAO!で5月15日まで全国配信が行われている。要チェックである。

【前編】ABCテレビ発バラエティ番組なぜ世界で評価されたのか

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