ローカル局コンテンツで地域ブランディング「のぞいてニッポン」記者会見レポート
編集部
全国のローカル放送局13社と楽天グループ株式会社、株式会社LiveParkからなる「のぞいてニッポン運営委員会」は2023年7月14日、ザ・プリンス パークタワー東京で記者会見を行い、ローカル番組コンテンツ配信を通じて地域の魅力を発信するサイト『のぞいてニッポン』の立ち上げを発表した。
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■ローカル局制作番組を「楽天市場」内で発信、関連地域への物販・旅行予約へ誘導
同サイトは楽天が運営するECサイト「楽天市場」内のコンテンツとして公開され、各局がこれまでに制作、放送した地域紹介番組の動画を配信。LivePark社内に編集部を設け、所属ライターが各動画の注目ポイントを独自目線で記事化するなど、興味関心を高める取り組みも行われる。
興味を持ったユーザーは「なるほどですね〜」ボタンでリアクションでき、同サイトではこの結果をもとに注目の地域やトピックをランキング化。「楽天市場」をはじめ、ふるさと納税ポータルサイト「楽天ふるさと納税」、旅行予約サービス「楽天トラベル」ともシームレスに連携し、消費活動を通じた地域とのつながり創出を狙う。
当面の収益源は広告収入をベースとし、自治体からの協賛をはじめ、「楽天市場」「楽天トラベル」に参加する業者からの広告配信も予定。上がった収益は参加社間で分配される。
「のぞいてニッポン」に参加する放送局は、HBC北海道放送、RAB青森放送、TVIテレビ岩手、テレビ金沢、日本海テレビ、RSK山陽放送、瀬戸内海放送、南海放送、RKB毎日放送、サガテレビ、TOSテレビ大分、UMKテレビ宮崎、OTV沖縄テレビ放送の14地域13社。ネットワーク系列の多様さに加え、エリアを同じくする放送局同士が参加するケースもある。
■ローカル局コンテンツと“楽天経済圏”が生み出す「リテールメディア」
楽天グループ株式会社 常務執行役員 コマース&マーケティングカンパニー シニアバイスプレジデントの松村亮氏は、「のぞいてニッポン」について「消費活動を通じて生活者とのコミュニケーションを図る『リテールメディア』である」と定義する。
「これまで楽天では、『楽天市場』『楽天トラベル」』などを通じ地方の活性化に取り組んできた」と松村氏。「各地域の放送局が制作する魅力的なコンテンツを通じて、新しいメディア関係を作っていく」とし、「メディア、物販の両面からあたらしい顧客体験を提供する」と語る。
事業を統括する楽天グループ株式会社コマース&マーケティングカンパニー 楽天市場企画部マネージャーの盧 誠錫氏は、「放送局の力と楽天のプラットフォームを組み合わせることで、より強く地域の活性化に貢献できる事業が立ち上げられるのではないかと考えた」と、立ち上げの経緯を説明。「有名タレントやドラマコンテンツによらず、地域に根ざした各放送局が発信する地域密着情報を全国に向けて発信することに価値がある」と強調する。
盧氏は、地域への関心の高さを示すデータとして、楽天市場で昨年秋に実施された『ご当地アナウンサーが発見!地元の魅力聞き上手グランプリ3』の検証結果を紹介。視聴者の90%以上が地域外ユーザーで占められ、67%が紹介地域に対してポジティブに反応、約15%のユーザーが地域に関連した商品の購入や楽天トラベルの宿泊予約、ふるさと納税に興味を示したという。
「ローカル放送局の情報には非常に価値があり、それを全国に広く発信していくことで地域のブランディングに貢献できる」と盧氏。各放送局が取材し、発信する映像コンテンツで来訪者の興味関心を惹き、楽天のサービスを通じて“楽天経済圏”へ誘導することで、地域を拠点とした消費活動の創出につなげるとした。
■各局の新規事業、編成、営業部門が幅広く参加「ローカル局の新たな役割を」
本会見では、参加放送局の代表者が意気込みをあいさつ。担当部署は新規事業部門から編成、営業と多岐にわたり、それぞれが持つ参加意図の多様さを印象づけるかたちとなった。
参加理由については、「地域の楽しさを地元目線で伝える」「放送エリア外への情報発信」という声が多かった一方、「経済活性化や自治体プロモーションの場として」(日本海テレビ、瀬戸内海放送)、「県内の人々に対する県外目線からの魅力発掘」(青森放送)という声も。「コンテンツのファン層と消費行動の把握」(HBC北海道放送)と、自社マーケティングへの活用を掲げる局も見られた。
株式会社LivePark 特別顧問・ファウンダーの安藤聖泰氏は「テレビ放送が70周年を迎えるなか、周辺環境も変化している」としつつ、「ローカル局はキー局の番組を地域に届けるだけでなく、地域の情報や災害情報など、そして暮らしを支える放送を続けてきた」とコメント。「人口減少や経済の疲弊など、地域がさまざまな課題を抱えるなか、強い信頼と安心感を持つ“地元のトップ企業”たるローカル放送局の新たな役割を伝えていきたい」と述べた。