脱・職人芸!ビッグデータが実現する“刺さるプランニング”の未来形 unerry✕Resolving LAB「log-BLS」(後編)
編集部
左から)unerry・一枝悟史氏、ビデオリサーチ・吉田正寛氏
ブランドリフトに大きな効果を持つとされるテレビCM。しかしこれまでの計測手段は事後のアンケートが主流であり、具体的な消費行動につながったかどうかを判断する手段としては活用しきれていない側面があった。
そんななか、膨大な行動ログと視聴データを組み合わせることによって、テレビCMの具体的な行動への波及を接触回数ごとに可視化できる仕組みが生まれた。株式会社unerry(以下、unerry)とビデオリサーチグループのResolving LAB株式会社(以下、Resolving LAB)とが提唱する解析ソリューション「log-BLS(ログ・ブランドリフト)」だ。
前後編にわたって「log-BLS」を深掘りする記事の後編は、株式会社unerry Director / VR of Retail & Media Business Developmentの一枝悟史氏、株式会社ビデオリサーチ 企画推進ユニット DXマーケティング推進グループ フェローの吉田正寛氏にインタビュー。今回取り上げたウェビナーの内容をさらに深く掘り下げ、ビッグデータによって広がるブランドリフト計測の未来形を探る。
【前編】行動ログ✕視聴ログで見えたブランドリフトの新セオリー unerry✕Resolving LAB「log-BLS」
■テレビCM起点の消費行動をデータによって可視化、継続的なPDCAにつなげる仕組み
──「log-BLS」立ち上げの背景にあった課題意識についてお聞かせください。
一枝氏:テレビCMの認知的な効果はこれまでもアンケートで一定の指標を示してきましたが、実際の消費行動へどのくらいつながったかという点については具体的な証明が難しいものでした。こうした課題について、ビッグデータを用いた可視化というアプローチで臨もうと考え、「log-BLS」の開発に至りました。
吉田氏:「テレビCMによってブランドリフトの効果が出たことがわかったが、その後具体的にどのようなアクションを取ればよいのか」という声を多く耳にしてきました。接触、非接触の違いという単純比較ではなく、具体的なプランニングにつなげられる仕組みを作れないかという思いが、今回の背景にありました。
──これらの課題を「log-BLS」はどのように解決するのでしょうか。
吉田氏:「log-BLS」では、2,500万件の視聴ログと、スマホアプリや店頭のPOSデータなどのリアルな行動データを組み合わせ、テレビCMへの接触による生活者の行動変容を接触回数単位で細かく解析、追跡することができます。
「CMに2回以上接触している生活者から、こういう行動が生まれ始めている」という具体的なパターンが浮かび上がるため、広告主様は「この商材においては3回以上の接触を図ろう」「3回以上接触する生活者が全体の何%出るようにプランニングしよう」といった具体的な指標が設定でき、単なる「ブランドリフトのあり/なし」を超えて継続したPDCAサイクルを回せるようになります。
■「人の移動軸」の行動データと「テレビ視聴実態」の趣向データを突合、“意思を持った個人の動線”を浮かび上がらせる
──生活者の消費行動に関する膨大なログは、どのようにして取得しているのでしょうか?
一枝氏:unerryが120以上のスマホアプリに提供している「unerry SDK」を経由し、行動データを取得しています。具体的にはラジオアプリや天気アプリといった、移動中の使用が多いアプリや、チラシアプリ、地域の情報に密着したローカル局のアプリ上で取得された人流データで、アプリ上でユーザーから直接許諾を取り、かつ個人を特定しない形で集積されます。
また、協業のお取り組みの上でunerryは小売業者から店舗POSデータの提供も受けており、これらと紐づけることで、生活者が実際に起こした消費行動まで検証可能となっています。
──行動アンケートパネルである「ACR/ex」のデータと視聴ログはどう紐づけているのでしょうか?
吉田氏:メーカーのテレビの視聴ログをビデオリサーチの特許技術を使った独自のアルゴリズムで分離し、個人単位の視聴習慣を浮かび上がらせています。さらに、ACR/exのアンケートデータの中にも特定期間ですが、テレビ視聴実態を回答いただいていますので、これをキーに「テレビ視聴実態」で紐付けています。これにより、膨大なログのなかから、“意思を持った個人の動線”を浮かび上がらせることができます。
──「どんな番組を見ているか」で”どんな習慣を持つ人か”がわかるのですね。
吉田氏:視聴番組の趣向はその人の行動姿勢と直結していることが、データのうえでも明らかになりました。これまでも、「だいたいこの番組を見る人たちはこうした性格だろう」という肌感は存在していたかと思いますが、こうした実態をデータで可視化できることを確認しています。
■脱“職人芸”。膨大なファクトデータから商材・ブランドごとにプランニングの最適解を逆算
──「log-BLS」によって、具体的にどのようなことが可能となりますか?
吉田氏:「どれくらい出稿すればどこまで刺さるか」という“深さ”の指標がわかるため、解析結果をもとに「とりあえずCMはジャブ的に打とう」「ある程度のフリークエンシーを何%狙わなければいけない」など、期待する効果と予算からプランニングを逆算することが可能です。
──これまでプランニングは経験と勘による一種の職人芸的な部分がありましたが、「log-BLS」を活用すれば、特定の“職人”に依存せずにプランを組み立てられるのですね。
吉田氏:「log-BLS」を用いた解析を繰り返すことで、商材やブランドごとに最適な露出パターンの平均値がファクトデータとして浮かび上がってきます。これをもとに、特定の個人の知見や経験に依存することなく、精緻かつ再現性の高いプランを誰でも組み立てられるようになります。
一枝氏:自動車やスーパーマーケットなど、企業や商材によってコンバージョンは異なってきますので、自分の商材にあったセオリーを作っていけるのは「log-BLS」の大きな強みだと思います。
吉田氏:これまで同業他社などを参考にして「だいたいこのくらいだろう」と感覚的に出稿の塩梅を決めるケースも少なくなかったと思います。その点「log-BLS」では、蓄積された生活ログをベースとしているため、同一業態の平均データはもちろん、自社でキャンペーンを行う前の時点までさかのぼって解析することが可能です。
■OOHの“映り込み効果”や番組の潜在ファン層も可視化。「時間帯ランク」によらない枠価格設定が可能に
──記事前編で紹介された事例では、球場の場内広告など、これまで測定の難しかったOOHの効果も「log-BLS」によって可視化されていましたね。
吉田氏:「log-BLS」では生活者の屋外での行動を補足できるため、具体的にOOHに接触したことをログベースで確認することができます。今回ご紹介したケースでは、「バックネット裏の広告に接触した」という行動データと「バックネット裏の広告が映った野球中継」の視聴ログが重なることで、広告そのものへの接触に加え、副次的に野球中継の広告的な効果を示す結果にもつながりました。
番組中に特定スポンサーの商品を入れ込むプロダクトプレースメントなど、画面中の「映り込み」による効果を具体的に検証するのは難しいことでしたが、「log-BLS」では、OOHの映り込みなどの“2次効果”までをカバーすることで、広告媒体としての潜在的な価値を浮かび上がらせることできます。これまで効果が不明とされてきたような媒体に対しても、データに基づいた枠の価格設定が行えるようになるでしょう。
──交通量や時間帯といった「周辺情報」ではなく、実際の「行動状況」に基づいた値段設定ができるのですね。
吉田氏:たとえば、一般的に安めの価格設定であるテレビの深夜帯ですが、「この番組の視聴者は積極的に原宿へ足を運んでいる」といったデータが出ることで、「時間帯ランク別」以外の価格設定要素が生まれます。
さらに「log-BLS」では、「企画として想定していたターゲットではなく、『オシャレな芸能人が出ている』ことで番組を見ている層がいる」ということもわかります。これにより、「この番組を見て、この店に行って……」といった視聴者の具体的なペルソナがデータから正確に導き出され、よりターゲットに刺さる企画づくりが可能となります。
一枝氏:たとえば、同じスーパーマーケットでも「この番組を見ている人はA店によく行く」「この番組を見ている人はB店に行く」というように、番組が持つファンダム単位での行動ラインが見えるのが「log-BLS」の大きな特徴です。
視聴者と相性のよい商材が見えれば、より行動促進につながる企画に反映することができます。データの活用によって、広告主側の課題をクリエイティブ側が一緒になって解決していく流れが生まれるのではないかと大きな期待を感じています。
■行動データから“商流“を浮かび上がらせる「log-BLS」使い方は無限大、気軽に相談を
──今後に向けた展望を含め、読者のみなさまへメッセージをお願いいたします。
一枝氏:今後は地上波とTVerの行動形態の違いや、TVerのなかでも「この番組は外で見られている」「この番組は自室で見られている」など、番組ごとの行動セグメントが出せたらと考えています。
吉田氏:「log-BLS」はブランドリフトにとどまらず、行動から生活者をクラスタリングすることで、潜在的な商流を可視化させることも可能です。すぐに「このデータをこのビジネスに結びつけたい」と最初から絞らず、あえて抽象度の高い状態から洞察をしていくことで幅広い課題解決につながります。
一枝氏:お客様には、「行動データを活用してどんなことができそうか」という段階から、ぜひお気軽にお問い合わせください。いろいろなデータを見ていきながら、「こういう使い方ができそう」というアイデアを一緒に膨らませていきましょう。
吉田氏:「log-BLS」に関するお問い合わせは、unerryさん、Resolving LABのどちらでもお受けしています。購買軸で見たい場合はunerryさんへ、メディア起点で見たい場合はResolving LABという形でご相談先を決めていただいても結構ですし、3社でのミーティングも可能です。まずは雑談ベースから、お気軽にお話しましょう。
【前編】行動ログ✕視聴ログで見えたブランドリフトの新セオリー unerry✕Resolving LAB「log-BLS」