メディアの未来まるわかり!「INTER BEE BORDERLESS」セッション全貌
ジャーナリスト 長谷川朋子
メディアエンターテインメント業界のプロフェッショナルが一堂に会する国内最大級のメディア総合イベント「INTER BEE 2024」(主催:一般社団法人電子情報技術産業協会)の会期が迫る。60回目の記念すべき開催となる今年は幕張メッセを会場に11月13日(水)~15日(金)までの3日間にわたり開催される。昨年よりさらに展開規模の拡大を図るなか、特別企画「INTER BEE BORDERLESS」で行われるメディアの未来を見据えるセッションの見どころを紹介したい。
Inter BEE 公式Webサイト 来場事前登録・コンファレンス聴講予約受付中!
■基調講演は「放送の未来像を配信の“現場”から考える」
今年もINTER BEE の会場では、メディアとエンターテインメントのビジネストレンドの発見と多様な最新テクノロジー発信の場として熱気に包まれそうだ。コロナ禍以前の開催規模に近づいた昨年の出展社数1005社、来場者数3万1702人の実績よりも今年はさらに増える見込みで、幕張メッセの7つの展示ホールを会場に規模を拡大して開催される。
また60回目の記念開催となる今回、メディア&エンターテインメント産業界の『未来を見据え、新たな10年への扉を開く』取り組みとして、「INTER BEE AWARD」や新しい特別企画「INTER BEE CINEMA」が新設される。
「コンテンツを中核としたこれからの10年」が全体のキーワードとなるなか、特別企画「INTER BEE BORDERLESS」セッションの今年のキャッチフレーズは「メディアは、自由になった。ビジネスは、解放された。」だ。注目のメディアビジネストレンドを網羅する内容で3日間合計12のセッションを実施予定する。
「INTER BEE BORDERLESS」を象徴するセッションとして企画されるのが「放送の未来像を配信の“現場”から考える」【11月14日(木)13時~14時30分/国際会議室】と題した基調講演だ。TVer取締役の須賀久彌氏、フジテレビ技術局技術戦略部チーフエンジニアの伊藤正史氏、中京テレビ技術DX局専門局長の大橋道生氏、北海道放送メディア戦略局長の滝沢淳一氏の4人をパネリストに迎えて、青山学院大学総合文化政策学部教授の内山隆氏がモデレーターを務める。デジタル時代の放送の未来像を描くための議論の中で「もしも自分がTVerの社長だったら…」「ローカル局の社長だったら…」という登壇者同士が互いの立場を考える試みが行われる。今後の展開や連携のヒントが詰まった内容になるだろう。
■最新メディア事情が学べる初日4つのセッション
展示ホール4に位置する「INTER BEE BORDERLESS」内のオープンステージで行われるカンファレンスのトップバッターは「定量データから見る情報空間の現在地〜生活者トレンドを正しく理解し、制度設計の礎とする」【11月13日(水)10時30分~12時】だ。モデレーターを務めるのは、元電通メディアイノベーションラボ責任者で、今年、メディアビジョンラボを立ち上げた代表の奥律哉氏である。電通メディアイノベーションラボ主任研究員の森下真理子氏とビデオリサーチひと研究所所長の渡辺庸人氏を迎えて、最新のメディア接触デーア分析結果から生活者トレンドや時代に合った制度設計を放送メディアトップアナリストたちが解説する。
続くセッションはテレビCMの新たな価値を議論する。「アドリーチマックス・プラットフォームのインプレッション取引を深掘りする」【11月13日(水)13時~14時】と題し、日本テレビが来年春のスタートを目指して開発中のアドリーチマックス(AdRM)を扱う。日本テレビの担当者であるアドリーチマックス部の松本学氏と武井裕亮氏を迎え、広告主の声を集めた宣伝会議編集長・谷口優氏から質問を投げかけるパートも作られる。本セッションを企画したメディアコンサルタントの境治氏がモデレーターを務める。
初日3つ目のセッションはデジタルサイネージの進化で有効なメディアとして浮上するリテールメディアがテーマだ。「テレビにとってリテールメディアは敵か味方か?~テレビとの親和性を探る~」【11月13日(水)14時30分~15時30分】と題し、ファミリーマートに設置されたデジタルサイネージを手掛けるゲート・ワン取締役COO速水大剛と、小売店舗にテレビモニターの設置の取組みを続けてきた北陸朝日放送伊藤祐介氏を迎えて、モデレーターは本セッションをコーディネートしたNEC所属の深田航志氏が務める。
初日のラストは進化するラジオを主役に「音声コンテンツとしてのラジオの展望、そしてテレビが学ぶべきことは?」【11月13日(水)16時00分~17時20分】を送る。音声コンテンツを扱う広告会社オトナル代表取締役八木太亮氏と、具体例を揃えるニッポン放送冨山雄一氏、そしてラジオドラマ『空想労働シリーズ サラリーマン』を手掛けるRKB毎日放送冨士原圭希氏が登壇。プロレタリア星地球営業所のサラリーマン氏も会場に駆けつける予定だ。本セッション企画者のテレQ永江幸司氏が進行する。
■ローカルからグローバルまで注目テーマで熱く議論
2日目は「デジタル時代にドキュメンタリーをどう届けるのか」【11月14日(木)10時30分~11時30分】から始まる。ショート動画「Nドキュポケット」の総再生数が1億8000万回を超えた日本テレビの今村忠氏、「Yahoo!ニュース ドキュメンタリー」を手がけるLINEヤフーの金川雄策氏、元安芸高田市長の石丸伸二氏と市議会を追ったドキュメンタリーを制作した広島ホームテレビの立川直樹氏の3氏が登壇。本セッションを企画した日本テレビ三日月儀雄氏がモデレーターを務める。
放送業界の未来像を率直に、明るく熱く意見交換する注目のセッションは「ローカル局 元トップが次世代に託す放送局の未来像」【11月14日(木)15時~16時30分】だ。長年ローカル局の経営に携わり社長・会長を務め、話題の自著本などを持つ元トップの九州朝日放送取締役相談役の和氣靖氏、南日本放送相談役の中村耕治氏、札幌テレビ放送元相談役根岸豊明氏の3氏が登壇し、モデレーターはワイズ・メディアのメディアストラテジスト塚本幹夫氏が務める。
2日目はパネラーだけでなく来場者との意見・提案の場を設け、会場全体で議論を進める双方向セッションも用意する。「After Hours アーカイブ配信なし!ローカル局コンテンツに明日はあるのか?」【11月14日(木)17時~19時】と題し、ローカルコンテンツの活用法を議論。「ローカルコンテンツバンク」の取組みを紹介する北海道テレビ放送阿久津友紀氏、放送コンテンツ海外展開促進機構事務局長の秋山大氏、博報堂DYメディアパートナーズ上席研究員の森永真弓氏を迎えて、テレQ永江幸司氏が進行する。
最終日となる3日目も見逃せないセッションが続く。今年、大きな話題を集めたドラマ「地面師たち」のNetflixエグゼクティブ・プロデューサーの髙橋信一氏が登壇する「Netflixヒット作のプロデューサーに聞く最前線ストーリー」【11月15日(金)10時30分~11時30分】では、エンタメ事情にも詳しいnoteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦氏も迎えて、筆者の長谷川朋子の進行でNetflix日本発グローバルヒット作から日本の放送業界の未来を探る。
メディア企業が知っておくべき生成AIの活用法が学べるセッションは「メディア企業は生成AIをどう使うか~活用事例とリスクマネジメント」【11月15日(金)12時~13時30分】だ。具体例を紹介する北海道文化放送杉本歩基氏とTOKYO MX樋田光風氏と共に、生成AIのリスク事情に精通する高樹町法律事務所弁護士の澤田将氏も登壇し、「ABEMA Prime」の事例も披露するテレビ朝日アナウンサー平石直之氏がモデレーターを務める。
個人の発信力の重要性が高まる時代にマスメディアの在り方を議論する「「個人メディア化」が加速する時代にどう向き合うのか」【11月15日(金)14時~15時】では、元日本テレビのキャスターで現在、関西学院大学特別客員教授の小西美穂氏と「ABEMA NEWS」チーフプロデューサーの郭晃彰氏、社会を知る動画メディア「RICEメディア」の廣瀬智之氏をパネリストに迎えて、日本テレビ三日月儀雄氏の進行で送る。
ラストを飾るのは「日本におけるFAST事業の展開可能性と将来像」【11月15日(金)15時30分~16時30分】である。今年8月に「FASTサービス」の名称でローンチしたBBM代表取締役CEOの福﨑伸也氏と同サービスを採用して関西で普及させている大阪ガスの棚倉悠平氏が登壇し、TBSテレビ高澤宏昌氏の進行で日本におけるこの分野の可能性と未来を探る。
「INTER BEE BORDERLESS」コンファレンスはメディアの現在地と10年先のビジョンを仲間と共有する場を目指す。主査を務める境治氏、NHK放送文化研究所メディア研究部の村上圭子氏、各セッションを進行する高澤宏昌氏、永江幸司氏、三日月儀雄氏、そして私、長谷川朋子のメンバーで企画作業し、準備を進めている。今年も会場でお会いしましょう。