NECとNECネッツエスアイ、ITU-Tにおいて5Gを用いたIPマルチキャスト放送の無線伝送技術に関する国際標準化を達成
編集部
NECとNECネッツエスアイ株式会社(以下、NECネッツエスアイ)は、国際電気通信連合の電気通信分野の標準化を推進する部門(以下、ITU-T、注1)において、ケーブルテレビサービス向けのIPマルチキャスト放送(注2)を、5Gで2種類のMIMO(注3)を活用して無線伝送する技術の国際標準化を達成した。
ケーブルテレビは、平時・有事を問わず地域の通信や情報伝達を担う、日常生活に不可欠なインフラの1つだ。近年、通信量の増大に伴い大容量の通信を可能にする光ファイバーでの通信が浸透しているが、築年数を経た集合住宅の多くは同軸ケーブルが配線されており、張り替えにかかる作業の負担とコストの増大が課題になっている。また、インフラが十分に整備されていない辺地共聴世帯(注4)においては、ケーブルテレビ回線のラストワンマイルの効率的な整備が重要となる。これらの課題は日本国内のさまざまな地域で共通しており、光ファイバーによる従来の有線方式に比べて、各種コストの低減が期待できるローカル5Gを活用したアクセス方式が注目されている(図1、図2)。
NECとNECネッツエスアイは、IPマルチキャスト放送の無線伝送技術の研究開発を行っている。今回、国際標準化を達成した技術は、5Gで2種類のMIMOを活用した無線方式の適用に必要な機能要件を規定しており、ITU-T勧告 J.154(注5)として2026年4月に発行された。なお、本国際標準化に向けた取り組みは、総務省委託研究開発「IPマルチキャスト放送の無線伝送に向けた周波数有効利用技術の研究開発(注6)」の一環となる。
本勧告では、利用できる周波数帯が限られるローカル5Gを活用し、大容量の映像配信に加え、ケーブルテレビサービスにおけるインターネットアクセス用のデータも同時に送信するために、周波数の利用効率を高めるシステムの機能が要件として規定された。本技術では、映像配信に基地局から複数の受信機へ1対多で配信するマルチキャストと、1対1で配信するユニキャストを組み合わせることで、周波数の利用効率を高める。さらに、マルチキャストには安定通信を重視したMIMOを、ユニキャストには高速大容量通信を重視したMIMOをそれぞれ適用する。
NECネッツエスアイは今後もケーブルテレビ事業者と連携し、2028年を目途に国際標準化された規格に基づくケーブルテレビサービスの実用化を目指す。NECとNECネッツエスアイは、本技術を通じて既存インフラの有効活用や整備コストの低減を図り、平時のみならず災害時等の有事にも役立つ情報伝達インフラの強化に貢献していく。
注1:ITU-T
国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)は、国際連合の専門機関の一つであり、情報通信に関する国際ルールや標準等を策定する国際機関。ITU-T(ITU Telecommunication Standardization Sector)は、電気通信分野の標準化を行っている、ITUの部門。
ITU: Connecting the world and beyond
注2:IPマルチキャスト放送
インターネットプロトコル(IP)を用い、特定の複数の宛先に対して同時にデータを送信するための技術。IPマルチキャスト放送とは | 文化庁
注3:MIMO
MIMO(multiple-input multiple-output)は、5Gなどで一般的に用いられる技術。送受信に複数アンテナを用い、通信速度の向上や干渉や反射に対する通信の安定化を実現できる。
注4:辺地共聴世帯
地上波のテレビ放送の電波が届かないため、共同受信設備を利用してテレビを視聴している世帯。
注5:ITU-T勧告 J.154
J.154 : Functional requirements for IP broadcast services in cable television that use multiple-input-multiple-output (MIMO) in IMT-2020 systems
注6:IPマルチキャスト放送の無線伝送に向けた周波数有効利用技術の研究開発
https://www.soumu.go.jp/main_content/000927691.pdf
※記載されている会社名および製品名は、各社の商標または登録商標です。