世界でバズる日本発のスポーツエンターテインメント『SASUKE』~カンヌ現地インタビュー前編
27NOV

世界でバズる日本発のスポーツエンターテインメント『SASUKE』~カンヌ現地インタビュー前編

テレビ業界ジャーナリスト  長谷川朋子 2017/11/27 08:00

世界に知られている日本のテレビ番組と言えば、TBSのスポーツエンターテインメント『SASUKE』がその代表例にあたる。20周年記念番組として先月放送された『SASUKE2017 秋』ではアメリカ版で一躍有名になったジェシー・グラフ選手が出場し、女性で初めて第3ステージに進出した動画が世界中にネット上で拡散した。国や地域を越えて、注目され続けている『SASUKE』の成功の理由はいったい何か? TBSと共同でセールス活動を行っている米Bellon Entertainment(ベロン・エンターテイメント)社長のGregory Bellon(グレゴリー・ベロン)氏(写真左)と、TBSテレビ・メディアビジネス局海外事業部チーフの杉山真喜人氏(写真右)に、世界最大級のテレビ番組見本市MIPCOMが開かれたフランス・カンヌ現地で答えてもらった。

『SASUKE2017 秋』にも出場したジェシー・グラフ選手

競争率の高いアメリカで日本の実写番組が成功した理由

1997年に放送が開始されて以来、20年にわたり日本でも根強いファン層を持つ『SASUKE』の海外での人気は「アメリカでの放送から、実質すべてが始まりました」と杉山氏が話し始めた。

「Ninja Warrior(ニンジャ・ウォリアー)」の番組名で2006年10月にアメリカのケーブルテレビ局G4(ジー・フォー)の深夜枠で放送がスタートすると、早くも人気番組として認知され、翌年4月からはプライムタイムに昇格。2009年秋には「American Ninja Warrior(アメリカン・ニンジャ・ウォリアー)」として、日本の実写番組で史上初めて米4大地上波NBCのプライムタイムで放送実績を作り、アメリカ版は今や、高視聴率を獲り続けるNBCの看板番組のひとつとして、最新作の「シーズン9」も盛り上がりをみせたという。

アメリカでヒットした理由についてBellon氏はこのように分析する。

「エンターテイメントプログラムとしての完成度の高さがまず挙げられます。他の番組にはないユニークな要素があったからこそ、生き残りと視聴率競争が熾烈なアメリカで成功したのだと思います。」

トヨタをはじめ、Reebok、SUBWAY、Budweizerなど多岐にわたる世界的企業が番組スポンサーに並び、トム・クルーズ主演映画『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』や、『ファンタスティック・フォー』『ミニオンズ』『カンフー・パンダ』など、映画や商品とのタイアップ展開も数多い。

【例】トム・クルーズ主演映画「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」とのタイアップ動画
※「Ninja Warrior」FBより引用

放送後わずか4日で再生回数1億回超

スポーツ番組をはじめ、リアリティー番組やクイズ番組では勝者ひとりを決める勝ち抜きスタイルが一般的だが、『SASUKE』の場合は出場する選手ひとりひとりが主役という、オリジナルのスタイルを貫いているところにも注目したい。全4ステージを制覇する、いわゆる「完全制覇者」が誕生しないケースの方が圧倒的に多く、これまで延べ3,500人の選手が挑戦して「完全制覇者」はわずか4人である。これがかえって、視聴者も参加者も応援することを楽しみ、思わずそれを人に伝えたくなる雰囲気を作り出していると言える。それゆえ、ソーシャルメディア(SNS)との親和性も高い。「SNSによって、選手の活躍など情報が拡散する現象が毎回起こり、それが人気拡大に拍車をかけています」と杉山氏が説明する。

昨年、アメリカ版の第8シーズン・ラスベガス決勝で、スタント・ウーマンのジェシー・グラフさんが女性選手で初めて第1ステージを突破する快挙を達成した際には、米NBCの番組公式サイトに掲載された動画が、わずか4日の「世界最速ペース」で、再生回数1億回を突破した。(関連記事:http://ow.ly/Jf0q30gLVtW

ジェシー・グラフ選手の動画(第1ステージ)

さらに、グラフ選手は先月の『SASUKE2017秋』で、今度は女性で初めて第2ステージをクリア。

ジェシー・グラフ選手の動画(第2ステージ)

第3ステージでも圧巻のパフォーマンスを見せたことで、これがまた世界に“バズ”を起こすことに。

ジェシー・グラフ選手の動画(第3ステージ)

放送直後から、TBS海外事業公式Facebookに英語字幕付きの動画をアップしたところ、TBSの同公式サイトだけでも、関連動画が1週間でリーチ530万、再生回数130万回超を記録した。

「2014年にケイシー・カタンザロさんが女性選手で初めて予選を完全制覇したことで、女性の参加者も増え、ジェシー・グラフさんら複数の女性選手を含む新たなスター選手が番組から誕生しました。一躍全米規模で有名人になったジェシー・グラフさんが、特に日本の第3ステージで見せた滑走シーンはこれまで、並み居る男性選手でさえも見せたことがないような想像を越えるものでした。SNSは早期対応が鍵です。制作陣とも連携し、事前に世界に向けた映像配信の準備を進めていたことも拡散に繋がったと分析しています。」(杉山氏)

「多くのメディアが彼女たちの活躍を報じ、ケイシーもジェシーもトークショーなどにもひっぱりだこ。番組のシンボルにもなるこうしたヒーロー、ヒロインの存在は他の国で販売するにあたっても良い影響力を与えます。スポーツスピリットや女性の活躍は文化を越えて共有することができます。」(Bellon氏)

オーストラリアで『SASUKE』が社会現象に

アメリカでの成功もあり、放送エリアは年々拡大。放送実績は、これまでにアジア、ヨーロッパ、中東、アフリカ、ラテンアメリカなど165ヵ国・地域にまで広がっている。これほどの実績を作っている日本の番組は『SASUKE』と『風雲!たけし城』だけという。

フランス版はカンヌのヨットハーバーにセットが組まれ、収録が行われている

フォーマットによる現地版制作も広がり、現在、19か国に達した。欧州地域のフォーマット販売を手がける電通とのパートナーシップで実現したフランス版は、カンヌ市がスポーツ振興の一環として招聘し、春のカンヌで番組見本市のMIPTV直後に収録が行われている。また今年から始まったオーストラリア版も早々に成功を収めている。「オーストラリア全局全番組中、今年の年間視聴率トップ10のランキングの上位9位までを『SASUKE』の現地制作版『Australian Ninja Warrior(オーストラリアン・ニンジャ・ウォリアー)』全9話が占めてしまいました。まさに社会現象とも呼べる人気ぶりです。」(杉山氏)

MIPCOMメイン会場の目立つ場所に置かれたオーストラリア版の看板

理想的なサクセスストーリーとも言えるが、海外セールス開始後のはじめの4年あまりは売れなかった時期があったことも明かしてくれた。

「今、成功している状況にあるのは、その裏に“忍耐”と、多くの方々の“協力”があったから。どの国・地域だったらヒットするのか、リサーチし、それをチャレンジし続け、関係者の協力のもと、セールスチームが粘り続けた結果が大きいと私は思います。」(Bellon氏)

Bellon氏が代表を務めるBellon Entertainment社とTBSは長年にわたって協力関係を築き、共同でフォーマットの海外セールス活動を行っている。

「父が米CBSから独立して、社長を務めていた時代からTBSと仕事を続けさせてもらっています。Bellon EntertainmentとTBSとのパートナー関係はかれこれ50年になります。長年の親交を通じて、日本の番組がグローバルに広がるようになっていることを本当に喜ばしく思っています。」(Bellon氏)

信頼関係が築かれている両社のタッグによって、売れている番組は『SASUKE』だけに限らず多数ある。後編では、新たにリリースされた『風雲!たけし城』の話題を含めて、引き続き2人にカンヌ現地で聞いた話をお伝えしたい。

[後編]『風雲!たけし城』が世界でロングランヒットの理由

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