キー局動画配信の課題と展望、各局の施策は? 【Inter BEE 2016レポート】
編集部
2016年11月16日~18日、幕張メッセで開催された「Inter BEE 2016(国際放送機器展)」。今年は3日間で登録来場者数が過去最多の38,000人を超えるなど、大変な注目を集めたイベントとなりました。Screensは 多くの展示や企画のなかで、17日に行われた企画セッション「キー局の動画配信2016」に参加してきました。テレビの動画配信に関する最新動向をレポートします!

Inter BEE 2016
■多くの動画配信サービスがスタート
昨年は150席の会場が満杯となり、今年は200席に増やしたものの会場の後ろに立ち見の方がずらりと並ぶ盛況となった企画セッション「キー局の動画配信2016」は、まずモデレータが、この1年間ほどで何が起きたかを振り返りました。
(2015年)
・9月1日 Netflix 国内サービス開始
・9月24日 amazonプライムビデオ 国内サービス開始
・10月26日 TVerサービス開始
(2016年)
・2月23日 GYAO!がSVODサービスのプレミアGYAO!開始
・3月17日 ソフトバンクがスポナビライブ開始
・4月11日 Abema TV サービス開始
・8月19日 DAZN サービス開始
以上のように、月額見放題のサブスクリプション型サービスのローンチが大きなニュースとなった1年でした。そして多くのサービスが出現し、コンテンツの囲い込みが始まった時代でもあったようです。
テレビ局としてはコンテンツが高く売れるようになった反面、プラットフォームとしての立場から見て、現状はどうなのかを知りたいところです。続いて、各局の取り組みが紹介されました。
■テレビ局の動画配信ビジネスもさらに活発化!
参加各局による直近の動画配信ビジネスの現状はどうなっているのでしょうか。各局の説明をまとめました。
・フジテレビ
動画配信・ライブ配信・電子書籍配信からなる総合エンターテイメントサイトの「FOD(フジテレビオンデマンド)」において、無料配信サービスの「+7(プラスセブン)」対象番組が14番組から24番組に増やし、広告出し分け機能を実装し、自社番宣で試験運用。 SVOD事業「FODプレミアム」、「FOD VR(バーチャル・リアリティ)」アプリの配信もスタート。今後の「FOD」のキーワードは1プラットフォーム。SVOD、ADVODを組み合わせてU-VOD(Ultra-VOD)を実現し、総合エンターテイメントプラットフォームを目指す。
・テレビ東京
動画配信は「テレビ東京オンデマンド」として、TVODやSVOD業者に作品を提供し収益化を図る。ADVODの「ネットもテレ東キャンペーン」では「GYAO!」や「TVer」など外部へのサービス展開。アニメは「あにてれしあたー」として国内のみならず海外にも展開し、独自の強みを持つ経済ではSVODで「ビジネスオンデマンド」の自社サービスを提供。自社のプラットフォームを持っていないので、全方位外交というテレ東っぽさを活かし、自分たちの商品が、いつでもどこでも認識できるリーチの最大化と最適化を求める。
・TBS
無料配信の「TBS FREE」は2014年から開始し、昨年からは「TVer」にも参加。今年10月に動画配信「TBSオンデマンド」をリニューアル。月額900円(税抜)の「プレミアム見放題」を開始。900円のうち500円はポイントで、都度課金のコンテンツ視聴が可能。「逃げ恥」人気を追い風に会員数は非常な勢いで伸びている。無料も有料も、いろいろなサービスに力を入れながら、最終的には子どもの頃から大好きだった番組を、いろんな形で世の中に届けたい。
・テレビ朝日
自社事業としては「テレ朝動画」、TVODやSVODでは「ビデオパス」「TTFC(東映特撮ファンクラブ)」「NJPW WORLD(新日本プロレスワールド)」でプラットフォーム事業を展開。リニア型としてサイバーエージェントと協業したインターネットテレビ局「Abema TV」は、本格開局から6カ月強で1,000万DLを突破。「Abema TV」で他社と共同制作を行って気づいたことは、UI/UXの大切さ。良いものさえ作っていれば良いというのは慢心で、観やすい環境がないと観てもらえない。
・日本テレビ
動画サービスを、TVODでは「日テレオンデマンド」、SVODは「hulu」、ADVODは「日テレ無料TADA!」などで展開。ソーシャルTVプラットフォームの「HAROiD」も開始。2014年に日本法人譲渡を受けた「hulu」は好調で、コンテンツ数は譲渡前の13,000から30,000以上に、ユーザー数は61万人から130万人へと急増。今後も、コンテンツの価値までメディアや他社に売り渡さない、きちんとコントロールできるモデルでやるという方向性を維持したい。
以上のように、各社独自でコンテンツ配信の取り組みを拡大しているようです。それぞれ、重点の置き方やサービス拡大の順序は違いますが、「いかに多くの人にコンテンツを届け、それをマネタイズしていくか」を模索しているという点は共有している印象でした!
セッション参加者
〇モデレータ
・塚本幹夫氏(株式会社ワイズ・メディア代表取締役、メディアストラテジスト)
〇パネリスト
・太田正仁氏(日本テレビ放送網株式会社 インターネット事業局 インターネット事業部、副次長)
・大場洋士氏(株式会社テレビ朝日 総合ビジネス局 デジタル事業センター、アライアンス事業担当部長)
・田澤保之氏(株式会社TBSテレビ メディアビジネス局、映像コンテンツ事業部長)
・蜷川新治郎氏(株式会社テレビ東京 コミュニケーションズ、取締役)
・野村和生氏(株式会社フジテレビジョン コンテンツ事業局 コンテンツデザイン部、副部長)