地域でのメディアの役割とは?INTER BEE CONNECTED「ローカルコンテンツ」「2030年のテレビ」打合せ
編集部
11月14日(水)~16日(金)の3日間、幕張メッセで開催される音と映像と通信のプロフェッショナル展、Inter BEE2018。
そのInter BEEにて開催される、放送と通信の融合を展示とプレゼンテーションで提案するINTER BEE CONNECTEDの最終日である16日の2セッションの打ち合わせが行われ、その模様がInter BEE Magazineにて掲載された。今回打ち合わせが行われたのは、「ローカルコンテンツ×持続力のある地域創生」(13:30-15:00)、「2030年 テレビは何ができるのか?〜Society5.0時代のメディアの役割〜」(15:30-17:00)。両方とも地域とメディアの関わりをテーマにしており、ローカル局だけでなくキー局も含めて社会にとって放送の役割とは何かを議論する予定となっている。
「ローカルコンテンツ」のセッションでモデレーターを担当するのは、大河ドラマ『真田丸』などに携わってきた、NHK放送文化研究所の吉川邦夫氏。大河ドラマの舞台になった地域では、それを利用して地域創生にうまくつなげる事例も多いという。セッションに登壇するのはいずれも、地域の活性化にも貢献したコンテンツ事例を持つローカル局の面々だ。高知さんさんテレビの植田昌之氏は、新聞連載から生まれた実写×アニメ作品『おへんろ。』を紹介。また、南海放送の大西康司氏はオリジナルのラジオドラマが映画に発展した『ソローキンの見た桜』を、北海道文化放送の後藤一也氏は橋本奈々未が出演する、小説を題材にした番組『恋する文学』について語る予定だ。
登壇するのは、産業能率大学経営学部、小々馬敦教授のゼミで、マーケティングについて学んでいる男女の学生たち7名。モデレーターはコピーライター/メディアコンサルタントの境治氏が担当する。
ローカル局がコンテンツ制作をする意味は、ひと昔前の“番販で収益化する”こととは少し違ってきているという。「映像を作るハードルも下がり、出し口のハードルも下がりました。良いコンテンツがあれば、様々なチャネルでキュレーションされるチャンスが広がっています」。そして、「それが地域創生にもつながる」と吉川氏は力説する。「いいものが残せれば、その地域のバイブルになるのです」。地域の人びと、そして、訪れる人びとが大切にしてくれるコンテンツづくりに、ローカル局こそが取り組むべき時かもしれない。
最後のセッション「2030年 テレビは何ができるのか?」のモデレーターを担当するのは、同じくNHK放送文化研究所に所属する村上圭子氏。官民一体で「Society5.0」の動きが進む中、地域社会にとっての放送の役割が見直されている。このセッションでは、「究極的に言えば、市民にとって生き残る放送局はどこでもよく、地域と真摯に向き合い、課題の解決に努力する局が選ばれていくはず」との村上氏の考えに基づき、NHKと民放、CATVそれぞれの立場からセッションを行う。
NHKからは“ディレクソン”活動を統括する花輪裕久氏が登壇。ディレクソンとは、呼びかけに集まった市民に番組企画書を作ってもらい、選ばれた企画を実際に制作する試みのこと。この活動を通じて見えてきた公共メディアとしての新たな役割を花輪氏に語ってもらう。となみ衛星通信テレビの宅見公志氏は、インターネットサービスを通じて暮らしの改善に取り組むという立場から、CATV事業者が地域に何ができるかを紹介する。地域貢献に取り組むローカル民放として近年大きく注目されている南日本放送の切通啓一郎氏には、東京中心の発想とは隔絶した独自の理念を語る予定だ。また、京都大学教授で放送法・情報法制の研究者として知られる曽我部真裕氏には、放送業界とはしがらみのない立場で自由な意見や期待を提示する。
「民放にはマネタイズの問題がある。また、NHKは東京主導の組織であり地域どのように貢献するのかという課題がある。CATVはメディアとインフラの両輪のどちらに比重を置くのかなど、それぞれに悩みは深いと思います。災害時の連携の必要性が叫ばれる中で、どう協業しどう棲み分けるのかを議論したいですね」と村上氏は、ディスカッションへの期待を語っている。
なお、本セッションの聴講は、公式サイトにて事前の予約が必要だ