AIやVR/ARなどを活用した新しい番組制作の展示【テレビ朝日グループ内技術展ゴーテック2019】レポート(前編)
編集部
テレビ朝日は、グループ各社・系列各局で開発・改善された最新のサービスや、国内外の先進技術をグループ・系列内向けに紹介する技術展示会『ゴーテック2019』を、2月28日・3月1日の2日間にわたり開催した。

今年は同社のプレゼンルーム・ミーティングコーナーに全36ブースが出展。「コンテンツ制作」「インターネット」「イベント」「ITサービス」「先端技術」の5つのジャンルで構成された各ブースでは、今後実装が期待される最新技術が紹介された。前編では、先端技術とコンテンツ制作から、AIやVR/ARなどを活用した新しい番組制作の展示をいくつかピックアップしたい。
■【先端技術】アンドロイドtottoとのリアル対話と5Gを活用した最新スポーツ中継技術
今年のゴーテックの中で最も注目を集めたのは、『徹子の部屋』の番組セットを模した特設スタジオに設置された『黒柳徹子のアンドロイドtotto~AIによる自律対話システムの搭載』展示だ。スタジオには黒柳徹子の等身大アンドロイド「totto(トット)」が腰かけており、来場者はゲストさながらtottoと対話ができる。以前はテキスト入力した音声を読み上げていたが、最新版ではAIが搭載されたことで受け答えのボキャブラリーが増え、1つの話題から広がりを持たせることも可能に。よりリアルな対話が実現した自律対話システムの採用に、来場者も予期せぬ高度な回答やそのやり取りを楽しんでいる様子だった。

また、同局内で部局を横断して編成された「テクニカルラボ(テクラボ)」からは、2つの先端技術ブースを出展。1つは、4Kのカメラ映像からAI技術による画像解析により人物特定を行い、常に指定した人物が中心になるように、自動でカメラのレンズの向きを動かす先端技術『NextreCam~AI技術を用いたスマートカメラの実現~』だ。担当者によると「深夜番組の活用を始め、将来的にはスタジオの無人化も検討している」とコメント。もう1つは、音声認識を使った『「キャプション起こし」支援』で、“インタビュー制作”や“記者会見”など、さまざまな音声素材のキャプション起こしを実現した。担当者は「まだ検証段階なので、もう少し精度が上がれば実用化も近い。技術としては字幕にも応用できると思う」と述べた。
ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピック開催を控える今、スポーツ中継の技術開発も急ピッチで進められている。
日本電気株式会社と株式会社NTTドコモと共同で行った新たな水泳観戦方法『5G×AR インカレ水泳の取り組み』では、放送で使用する様々な競技データ(着順・速報タイム・スタートリストなど)を、5Gの低遅延伝送によりARデバイス上にリアルタイムで競技中の選手から視線を外さずに競技情報が取得可能になる新たな観戦方法を実現した。


担当者からは、ARヘッドマウントディスプレイも従来に比べ軽量化されてきていることもあり、「ライブとテレビが合体したような新たな観戦体験を東京オリンピック・パラリンピックではみなさんにも体験してもらえるかもしれない」と抱負を語った。
また、総務省の「5G総合実証試験」をKDDIと共同で行った『5G×4K ゴルフ中継の取組み』では、上記同様5Gの“超低遅延”“大容量伝送”といった特徴を活かし、4KHDR映像のワイヤレス伝送を実施した。

さらにその映像を活かした4KHDRと2KSDRのサイマル制作ワークフローに関する検証も行い、「画質はケーブルがなくてもほぼ遜色ないレベルに到達している。サイマル制作ワークフローで制作した2KSDR映像を地上波中継で一部使用したことも自信になった」と担当者は説明した。
■【コンテンツ制作】新しいテレビの楽しみ方を提供する最新技術
14あるコンテンツ制作の展示ブースの中からは、3つの最新技術を紹介する。
「テクラボ」がコンテンツ制作領域で手掛けたのは、カメラ1台の映像からボールを認識する『トラッキングによる投球軌跡CG』だ。


これはバックスクリーン付近に設置した固定カメラの映像を使用し、ピッチャーが投げたボールを自動で連続検出して投球の軌跡をCG表示する技術だ。映像は中継車のスロー用ビデオサーバーに収録し、適時スロー再生してオンエアする。担当者は「大きな機材は必要なく、カメラを1台固定して小さなPCに入力するだけというシンプルさにも定評がある。昨年11月に行われた野球中継のオンエアでも放送実証済である」と今後の活用に期待を寄せる。
続いては、世界に数台しかなく、国内では同社だけが保有する『新・水中レールカメラの開発』。10年以上使用した初期型との改善点が担当者より説明された。中でも、稼働モーターと水中ケーブルの軽量化により、セッティング時間は大幅に短縮された点を上げ、「軽量化による安全面の向上、漏電ブレーカーや安全カバーなど、選手の安全の確保、浸水検知アラームの搭載により、盤石の危険探知も向上した」と特徴を述べた。


新・水中レールカメラは既に昨年のインカレ水泳でも実装しており、7月に韓国で行われる世界水泳でも利用する予定だ。

また、『AIリアルタイム字幕システムの開発』においては、既にAbemaNewsで実用化されており、クラウドシステムと常時接続し、1秒未満のリアルタイム字幕表示を実現した。
担当者は、「不要な言葉を削除したり、句読点を入れて読みやすくしたりといった機能が自動でできるようになった。音の出せない公共機関等の視聴でも重宝されると思う」とその手応えを語った。
後編では、「インターネット」「イベント」「ITサービス」の最新技術を紹介する。