テレビとモノの新たな関係 ~ハイコネ実験事例の紹介~【Connected Media TOKYO 2019レポート】
19AUG

テレビとモノの新たな関係 ~ハイコネ実験事例の紹介~【Connected Media TOKYO 2019レポート】

編集部 2019/8/19 08:20

2019年6月12日〜14日の3日間、千葉県・幕張メッセにて、ビックデータなどデジタルメディア分野における技術を集めたカンファレンス『Connected Media TOKYO 2019』が開催され、全期間で15万人を超える来場者を記録した。今回はこの中から、6月14日に開催された専門セミナー「テレビとモノの新たな関係 ~ハイコネ実験事例の紹介~」をレポートする。講演者は、株式会社テレビ朝日 技術局 設備センターの原田裕生氏と、朝日放送テレビ株式会社 技術局開発部の中井隆幸氏。2018年9月にスタートした、スマートフォンアプリを起点としたテレビ連携技術「ハイブリッドキャストコネクト(ハイコネ)」の概要と、その実験事例を紹介した。

■「スマートフォンは敵ではなくサポーター」

セッション冒頭でテレビ朝日の原田氏は、2017年にNHK放送技術研究所が実施したアンケート調査の結果を紹介。テレビ番組を知るきっかけとなる情報源について、SNSや放送局のホームページなど、ネットからの流入が全体の51%にのぼった。「若者ほどネットからテレビ番組を知る。テレビにとってインターネットとスマートフォンは敵ではなくサポーター」と原田氏は語る。

「ハイコネ」は、放送と通信の連携サービス「ハイブリッドキャスト」の一種として誕生した技術だ。2016年にリリースされたVer.1は、テレビでハイブリッドキャスト起動中にスマートフォンへの情報表示を行なう“テレビ起点”のものだったが、2018年にリリースされたVer.2は“スマートフォンアプリを起点”とし、放送局がデータ放送の設備を持たなくとも、スマートフォンアプリからAIT(Application Information Table:アプリケーション起動情報データ)を参照するかたちでハイブリッドキャストの起動が可能となった。

具体的なユースケースとしては、スマートフォンアプリのプッシュ通知からテレビ視聴への誘導や、アプリを経由して放送局が提供するVOD(Video On Demand:非同期再生型ビデオ)をテレビで視聴するといったことが可能。コンテンツを見終わった後はそのまま放送画面に戻るため、視聴者に対して引き続きテレビ番組への流入経路を保つことができる点が特長だ。

続いて原田氏は、テレビ朝日における『ハイコネ』サービスの実験画面を紹介。専用のスマートフォンアプリケーションを「テレビ朝日専用リモコン」として位置づけ、プッシュ通知を経由してテレビの起動・番組への遷移を行ったり、キャッチアップ(見逃し配信)動画の視聴や系列BS・CS放送へスムーズに遷移したりする模様をデモンストレーションした。

■公式な番組素材の配布で「SNS拡散の質を上げる」

朝日放送テレビの中井氏は、続けて「ハイコネ」を活用した同社の取り組みを紹介。技術実証実験として開発したサービスのコンセプトビデオを上映した。

ビデオの中では、居住地域に応じた災害情報の迅速な提供や、視聴データにもとづく番組のレコメンド機能のほか、(今回の開発には含まれていないが)「番組をよく見ている視聴者」を選んでプレゼントの当選確率を上げる試みや、視聴データや属性情報にもとづく情報の出し分けなどの機能例がショートドラマ仕立てで紹介された。

なかでもひときわ目を引いたのが、現在視聴中の番組のサムネイル画像を視聴者がSNSで自由にシェアできるという機能だ。

昨今、無断でテレビ画面を撮影した画像や不正に改変された画像が「テレビで放送された内容」としてSNS上で出回るケースも見受けられるようになった。こうした問題に対し、「実際に番組を見ていない人が自局の放送リソースを用いて不確かな拡散を行わないよう、視聴データを活用して『実際に番組を見ていた時間』のみの共有を可能にする仕組みを技術検討した」という。

このほか、スマートフォンを起点としたテレビ画面操作の事例として、SNS上にシェアされたURL形式の「番組へのリンク」をクリックすることで、スマートフォンアプリを経由してテレビ画面を起動するという機能も紹介。

「ネットから放送へ、放送からネットへ…と、うまく循環させて相乗効果を狙いたい」と中井氏は述べた。

また、クローズドな環境で被験者を集めて実験し、アンケートをとったところ、「このサービスを通じて、友人知人からテレビ番組の情報が伝えられてきたらあなたはテレビを視聴しますか?との質問に、視聴する、おそらく視聴する、の回答の合計が6割を超えていた」とのこと。視聴者の期待も大きいようだ。

各民放局が続々と対応し、新しいテレビの楽しみ方として注目される「ハイコネ」。日常生活に密着するスマートフォンを起点とすることによって、テレビとのシームレスな動線づくりが期待できそうだ。もはや「テレビの電源を入れる」「チャンネルを切り替える」といった動作は過去の概念となり、SNS上のリンクをクリックする感覚でテレビ番組を楽しむようなライフスタイルへと変化していくのかも知れない。

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