100万視聴を生み出すライブ配信設備「ほこら」に潜入~FNN.jpプライムオンラインのシステム設計~(中編)
09SEP

100万視聴を生み出すライブ配信設備「ほこら」に潜入~FNN.jpプライムオンラインのシステム設計~(中編)

テレビ業界ジャーナリスト  長谷川朋子 2019/9/9 10:00

FNN28局による総合ニュースサイト「FNN.jpプライムオンライン」の売りのひとつがライブストリーミング配信である。世間で話題の会見動画をいち早く配信し、総視聴数100万回超えをたたき出す。その内容については前編でお伝えした通りだが、実はシステム上にも工夫が施されている。「FNN.jpプライムオンライン」ニュースルームに設置された「ほこら」と呼ばれる場所にそれが集約されている。フジテレビジョン総合事業局コンテンツ事業室の寺記夫氏、報道局マルチメディア推進部の瀬井貴之氏、技術局デジタル技術運用部の小西孝英氏の3人に「ほこら」を案内してもらった。(本文以下、敬称略)

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■ライブ配信機能を切り出し、スタジオのサブ環境を手作りで

――「FNN.jpプライムオンライン」のニュースルームの片隅に「ほこら」があった。壁に囲まれ、秘密基地のような場所である。


株式会社フジテレビジョン
総合事業局コンテンツ事業室
副部長
FNN.jpプライムオンライン
プロダクトマネジャー
寺記夫 氏

寺氏:こちらから日々、記者会見などのライブを自社サイトだけでなく、YouTube、LINE、Twitter、Facebookなどの外部プラットフォームにも同時に配信しています。大げさに言うとスタジオサブのような機能があり、常に複数の入力ソースをチェックして、配信に利用しています。チーム内では「ほこら」の愛称で呼ばれているんです。

株式会社フジテレビジョン
ニュース総局報道局
マルチメディア推進部
副部長 瀬井貴之 氏

瀬井氏:元々は物撮りなどを行っていたスペースでした。以前は地上波番組を収録するスタジオを配信用に利用していたのですが、老朽化のため閉じることになり、ライブ配信機能だけを切り出して、「ほこら」を作りました。


株式会社フジテレビジョン
技術局デジタル技術運用部
主任 小西孝英 氏

小西氏:サブで使っていた切り替え機など最低限の必要な機材を流用したり、社内の使われていない放送用機器を持ち込んだりして集めてきました。モニターやスイッチャーは民生品を使っています。放送ベースの機材は基本的にプロユースなので未だに単価が高いのですが、民生の映像機器は価格破壊を起こし、安価に手軽に手に入れることができます。新たに導入したブラックマジックデザイン社のコンバーターはまさにそんな製品です。この民生品のコンバーターが報道局からSDI信号で入る映像を配信用のHDMI信号フォーマットに変換させています。

瀬井氏:ここにある機材の半分はHDMIフォーマットです。コストカットのため、民生品を使わざるを得ない事情もありますが、パソコン上で行う作業は容易になります。プレステとファミコンを切り替えるような感覚で、サブスイッチングしながらやりくりしています。

――スタジオと比べてどれぐらいコストが削減されているのでしょうか?

寺氏:スタジオ運用に必要な人件費を含めると、ざっと10分の1以下でしょうか。編集ルーム内に設置されているので、ライブ配信するタイミングで人が集まりやすく、使い勝手が良い点などコスト以外のメリットも大きいです。

瀬井氏:多い時は月10本ぐらいのライブ配信を行っています。平均すると月に5~6本。1回の配信につき、最低1~2人で運用できます。

小西氏:夜中はスタッフの数が少ないのですが、ひとりが駆け込めば、最低1人で回せます。報道フロアから放送用の映像が届くので、地震などの災害時にも対応できます。

瀬井氏:分散メディア戦略でTwitter、Facebook、LINE、YouTubeにも映像を配信しているので、すべてのプラットフォームに配信するためのセッティングに数分を要しますが、基本は誰でもできるようにマニュアル化しています。

寺氏:テロップのミスを防ぐ為、ニュースルームの下の階にある報道のメインフロアと連携し、デスク担当から文言をメールで送ってもらっています。そこから「ほこら」にあるオリジナルのソフトでテロップに反映します。

瀬井氏:テレビ局の発想ではテロップを入れる作業も発注するのが基本ですが、ここのニュースルームは自分たちでできるだけ賄うようにしています。

寺氏:いつでもスイッチポンで放送用の入力ソースを取れることもテレビ局が運営するオンラインメディアの強みです。もともと放送用に制作されたコンテンツを、いかに最適な形でインターネット上に届けられるか。まさにニュースルームの腕の見せどころです。

■緊急時にも対応、フジテレビ独自の開発技術を活用

――放送用の入力ソースをニュースルームに「IN」し、デジタル配信用にHDMIで「OUT」するのにあたって、連携の工夫は他にもありますか?

寺氏:2018年9月に北海道で震度7の地震が発生した際に、地上波の映像をそのまま配信したのですが、CMは手動でフタをする必要がありました。この経験から、技術局がサイマル(同時放送)時には自動でCMに蓋がされるシステムを開発してくれました。

瀬井氏:ニュースルームには専門の技術スタッフが常駐していないので、全てにおいて簡易な仕組みを作っています。自動CM蓋システムを使う際はケーブルを抜くだけ。緊急時の設定に手間がかかりません。

小西氏:自動CM蓋システムはフジテレビ技術局のオリジナルです。これまで受賞歴もあり、実用性のあるものです。

――「FNN.jpプライムオンライン」のサイトをみると、動画だけでなく、動画を切り出した静止画をサムネイルに使った読み物記事も揃えています。切り出し作業もこちらで行うのですか?

瀬井氏:はい。会見をライブストリーミング配信しない場合は読み物記事用に切り出し作業が発生します。クラウド上の編集サービスに1日24時間、3、4日間分の映像をため込むことができるので、そこから切り出しています。ごく稀にXDカムの素材から切り出すこともあるので、報道フロアから素材を借りに走り、ニュースルームに持ち込んで作業するための機材も揃えています。

寺氏:動画のバリエーションとしては、ライブストリーミングのいいとこ取りした短尺動画を上げることもあります。録画したものをディレイでライブストリーミングする場合もあります。山里亮太さんと蒼井優さんの結婚報告会見は生ではなく、会見終了と同時にストリーミング配信しました。

小西氏:ディレイでしたが、早く配信することができたので、再生回数は100万回超えでした。「ほこら」があることによって、スマホ向けに動画を出すことができ、放送局の強みが発揮できているのだと思います。

ニュースルームの「ほこら」を実際に見せてもらうことによって、ライブ配信の仕組みを理解すると共に、費用対効果はベースとなるシステム作りから徹底していることもわかった。後編は動画だけにこだわらない方針にも迫り、テレビ局が運営する総合ニュースメディアとして「FNN.jpプライムオンライン」が勝ち組になりつつある理由を探る。

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