データで解明する!スポーツ番組の視聴の“質&価値”の最新動向【InterBEE2019レポート】
17JAN

データで解明する!スポーツ番組の視聴の“質&価値”の最新動向【InterBEE2019レポート】

編集部 2020/1/17 10:11

2019年11月13日(水)〜15日(金)、幕張メッセ(千葉県)において開催されたInter BEE 2019。その会場内のカンファレンスエリア「INTER BEE CONNECTED」で行われたセッションプログラムでは放送・広告業界における最先端の取り組みが紹介された。

本稿では11月13日(水)に行われたセッション「データで解明する!スポーツ番組の視聴の“質&価値”の最新動向」をレポート。最新の視聴データを用いてスポーツ番組の視聴動向分析を通じて現在のスポーツコンテンツに対する受容態度のトレンドを解き明かしながら、具体的な事例紹介とともに広告主サイドのスポーツコンテンツへの期待を聞く。

写真:左から郡谷康士氏、山田護氏、池田哲也氏

パネリストは日本コカ・コーラ株式会社 マーケティング本部 IMC コネクションプランニング&メディア グループマネージャーの池田哲也氏、TVISION INSIGHTS株式会社 代表取締役社長の郡谷康士氏、株式会社インテージ コミュニケーション事業本部 メディアデータ部 部長の山田護氏。モデレーターを株式会社インテージ コミュニケーション事業本部 テレビデータ戦略担当マネージャーの深田航志氏が務めた。

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■ラグビーW杯では「日本敗退後もM1層が持続」

まずは、郡谷氏が自社の視聴質計測ソリューション『TVISION INSIGHTS』の概要を説明。同サービスでは顔認識用カメラを搭載した専用端末により、テレビ番組の視聴動向を「VI(Viewability Index:テレビの前での滞在度)値」「AI(Attention Index:テレビ画面への注視度)値」の2軸を用いて解析する。

郡谷氏:『TVISION INSIGHTS』は「人がテレビをどう見ているのか」をデータ化する。同じ「テレビを見ている」状態でも、積極的に画面に向き合って視聴している「専念視聴」か、何かほかのことをしながらの「ながら視聴」かでその質は異なる。『TVISION INGHTS』では、センサーカメラと音声認識のデータを元に「どのような人がどのチャンネルをどのように見ているか」「ライブ(リアルタイム)での視聴か、録画での視聴か」といったデータを毎秒レベルで取得する。これを用いれば同じGRP(Gross Rating Point:のべ視聴率)を持つCM同士でも「どちらのクリエイティブが『よく見られた』か」がわかり、より具体的な広告効果の測定が可能になる。

郡谷氏は今年2019年夏に開催されたラグビーW杯中継における視聴質データを公表。今回の大会をきっかけにラグビー観戦に興味を持った、いわゆる「にわかラグビーファン」の具体的な視聴動向を説明した。

郡谷氏:初期の2試合ではM1層(13〜19歳男性)もF1層(13〜19歳女性)も視聴度合いは限定的だったが、M1層については「日本vsサモア戦」(2019年10月5日)から視聴が急激に増え、「日本vsスコットランド戦」(同10月13日)でピークに。F1層ではおなじく「日本vsスコットランド戦」から視聴が急激に増え、「日本vs南アフリカ戦」(同10月20日)ではM1層にほぼ同水準になった。日本は先述の「vs南アフリカ戦」で敗退したが、その後もM1層のアテンションは若干下がるものの「観戦熱」は維持した。

■「ガチファン」が多く、接触率の高かった東北地方

つづいて山田氏が、自社のデータパネル『Media Gauge』を紹介。同パネルではネット結線された全国のテレビ受像機・録画機から提供される視聴データをベースとしている。今回の分析には同社のテレビデータ『Media Gauge Dynamic Panel』が使用された。

山田氏:『Media Gauge Dynamic Panel』は実数データであるスマートTVの視聴ログを「人ベース」で解析できるソリューション。『Media Gauge』によって蓄積した機器ベースの視聴ログにあらかじめ許諾を得たdポイントクラブ会員の位置情報を組み合わせ、独自の推論を施すことで、視聴者の「在宅の有無」も含めての視聴判定が可能となった。これまで判別が難しかった「自分のいない家で、別の家族がテレビを見ている」といったケースは除外され、よりデータとして精度が高まっている。

パネルデータと実数データの「いいとこ取り」ともいえる『Media Gauge Dynamic Panel』はローカルエリアにおいてもターゲット層別の細かな分析が可能という。このデータを使い、同氏はラグビーW杯における県別の平均個人接触率を分析した。

山田氏:接触率では秋田県が全試合おしなべて高かった。関東地方では「日本vsスコットランド戦」で高い接触率を記録した。この前日には台風19号が東日本を襲っており、防災情報チェックのためにつけたテレビで試合を見ていたものと思われる。また南アフリカ代表チームのキャンプ地であった鹿児島地方では前述のスコットランド戦よりも「日本vs南アフリカ戦」の接触が高いなど、エリアごとの見られ方の違いが顕著にあらわれた。

つづいて山田氏は地方ごとの「個人接触の伸び率」を分析。日本最初の試合となった「vsロシア戦(9月20日)」から、最後の試合となった「vs南アフリカ戦(10月20日)」にかけての接触率の伸びを地方ごとに集計し、今回のW杯を通じてラグビー観戦が高まった「にわかファン」がどのエリアに多いかを浮かび上がらせた。

山田氏:「にわかファン」が多かったのは関東地方。W杯後半から観戦しだした人が多かった。いっぽう東北地方は複数の県で伸び率が一定しており、もともと観戦習慣のある「ガチファン」が多いものと思われる。

もともと競合の社会人ラグビーチームを抱え、東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県釜石市のように、復興の願いもこめて盛り上がりを見せたのではないか。

■接触率は「プロ野球の生中継 < ラグビーの再放送」

ここでセッションは、一旦パネルディスカッションへ。モデレーターである深田氏の問いに対してパネリスト両名が述べた。


−−ラグビーW杯ではM1層の「にわかファン」が熱量を持続させたとのことだが、他のスポーツではどのような結果が出ているか。

群谷氏:基本的にM1層は熱量が残りやすい傾向にある。2018年のサッカーW杯では日本敗退後も好カードが続き、注目度の高い試合が続いたこともあって同様に「にわかファン」が残りやすかった。「普段テレビを見ていないライト層は、スポーツイベントを通じてテレビの前でテンションを上げる」というデータが出ている。


−−ラグビーW杯はBSでも再放送されていたが、こちらの反応は?

山田氏:一般的にスポーツはライブで楽しまれるコンテンツだが、今回はBSでの再放送も視聴率が高かった。象徴的だったのが2019年10月18日。当日朝、メジャーリーグで「マー君」こと田中将大選手が先発登板する模様が生中継されたが、このあとに放送されたラグビーW杯の再放送の方が接触率が高かった。プロ野球においては試合結果だけを知りたいというニーズがあるかもしれないが、ラグビーにおいては試合の展開そのものがしっかりと見られていた。

いずれも、これまでの視聴率集計だけからは見えてこなかった姿だ。山田氏の言葉を借りるならば、試合展開そのものが注目されたラグビーは再放送であってもコンテンツとしてより大きな価値を持ったことがわかる。

■コカ・コーラの事例① 試合の盛り上がりにあわせた長尺CM出稿

つづいて、コカ・コーラの池田氏が、ラグビーW杯における同社のCM施策について説明した。

池田氏:スポーツコンテンツとコカ・コーラは切っても切れない関係だ。今回のラグビーW杯では「日本vsスコットランド戦」(10月13日)にて試合直前のCM枠を購入。当初は綾瀬はるかさん出演の15秒CMを予定していたが、30秒枠が購入できたため急遽CM素材を編集しなおし、ラグビー日本代表へのスポンサードを強調したバージョンを放映した。試合直前というタイミングでの放映が功を奏し、21%もの世帯視聴率を獲得できた。

続けて池田氏は、スポーツイベントにおいて視聴者の気分が盛り上がるポイントを狙ったCM投下の事例を紹介した。

池田氏:フジテレビのバレーボールW杯中継にて『アクエリアス』の120秒オムニバスCMを放映した。スポーツドリンクは秋冬にセールスが下がる傾向があるので、それを打開するために「部活をがんばる親子」をテーマにした30秒CMを開発しようと取り組みました。

最初は、3組の部活を頑張っている親子を30秒のCMで企画していたのですが、途中で120秒のCMを作ろうという話になりました。その120秒CMのキャンペーンの冒頭に流すことで話題化を狙ってOAする枠を探していた中、今回W杯初戦と2戦目において試合が盛り上がる後半部で120秒枠が購入できたので放映したところ、見込んでいた以上に反響が多く寄せられた。

クリエイティブも共感してもらうことを狙いとしたものだったが、それ以外では、楽曲としてthe pillowsの「Funny Bunny」をシンガーソングライターのUruがカヴァーしたバージョンを採用したところ、テーマに対する共感とともに楽曲への反響も相まった。単純に視聴者を感動させればよいと考えずに綿密な出稿タイミングの設計を行い、盛り上がりが期待できる試合後半部にCMを放映したことでここまでの効果が出た。

この施策の効果について、群谷氏が『TVISION INSIGHTS』の毎秒ごとAI(Attention Index:テレビ画面への注視度)値グラフを用いて説明した。

群谷氏:一般的に長尺のCMはアテンションがそんなに持続しないが、今回のCMでは120秒のCM中、高いアテンションを継続した。最初はいったん(注視度が)下がるものの、楽曲のサビのところでいっきに上がっている様子がわかる。CMの音声ボリュームがあがって新しいアテンションになり、そこで注視しだした人を感動的なドラマ展開で離さない工夫が機能したかたちだ。今回のCM施策がテレビの前の視聴者にしっかり刺さっていることをデータ上でもサポートできた。

池田氏も「この(『TVISION INSIGHTS』の)データには勇気づけられた」と語る。

池田氏:「最初にアテンションを取ることを意識したものを(CMとして)作れ」とよく言われ、作り方の面でも意識してきた。今回の120秒CMのように冒頭のブランドロゴ表示もなく、商品が大々的に出ないような作りのCMでこういうデータが出たのが驚きだったし、こうして視聴者のアテンションを惹きつけられるのだとわかった。キャンペーンの時期はずらせないが、そのなかで最善の枠を探せたと思う。

■コカ・コーラの事例② 試合結果連動型CM

コカ・コーラのスポーツイベントCMといえば、2018年の平昌(ピョンチャン)オリンピックで放映された「試合結果に応じて内容が変わるCM」も記憶にあたらしい。

池田氏:オリンピックという大きなスポーツイベントにとどまらず「日本全体でスポーツを応援する」というシーンでコカ・コーラを訴求できないかと考えた。平昌オリンピックでは「ウチのコークは世界一」というキャッチコピーを掲げ、試合結果に応じて内容が変わるCMを流す「(試合)結果連動型CM」施策をキー局中継で計5回行い、47%の広告認知、9億円相当の広告効果を達成した。

「この『(試合)結果連動型CM』のアテンションはすごく高かった」と郡谷氏。同じ中継の中で放映された他のCMよりも7割も高いアテンションを獲得したという。

池田氏:競技の結果が出た直後にその結果と連動した綾瀬さんのCMを流したこともあり、注目が高まった。このように視聴者との接点を最大化できるCMづくりを心がけている。

■「ユニフォームの胸ロゴ」から広告効果を測定

スポーツコンテンツにおける広告枠として、CMのほかに選手ユニフォームの「胸ロゴ」や会場内のロゴ掲出幕なども長く活用されてきた。試合中つねに画面に映り込むという点で視聴者の視界に入る確率は格段に高いとされてきたが、その性質上、具体的な効果測定は難しかった。こうした課題にAIを活用する試みがあるという。

池田氏:2019年8月、舞浜アンフィシアターで開催された全国高校対抗eスポーツ大会『STAGE:0(ステージゼロ)』にコカ・コーラがオフィシャルスポンサーとして協賛した際、インテージ社と連携して試合中継の画面に対する自社ブランドロゴの映り込み具合をAI解析した。

深田氏:試合中継画面を1フレームずつ画像に切り出して解析し、写り込んだロゴの種類を判定することでブランドごとの露出量を定量化した。結果、メインスポンサーであるコカ・コーラのブランドロゴが最も露出していたことがわかった。

池田氏:番組提供やCM枠購入においては視聴データを元にROI(Return Of Investment:投資利益率)を算出できるが、イベント協賛に対して具体的にどのくらいのリターンが見込めるかを出すことは難しかった。しかしこのようにデータとして露出量が可視化されれば、より説得力を持った形で施策を提案できる。

イベント協賛の費用対効果について頭を悩ませる企業は多いだろう。これまでイメージや来客者データなどからおおまかに推測するしかなかった効果が、こうしてブランドロゴなどの露出量なども具体的な数字として現れることで、イベントがふたたび広告媒体としての価値を帯びることになるだろう。これはイベント主催側としてもうれしい兆しだ。

■広告媒体としてのスポーツコンテンツへの期待

セッションの締めくくり、登壇者たちは次のように「広告媒体としてのスポーツコンテンツ」への期待を語った。

郡谷氏:スポーツコンテンツにおける効果測定技術の進化は広告主にとっても大きな価値を持つ。楽な試みではないが、ROIとして納得できるリターンがあるかを測るのは我々の使命だと思う。チャレンジやトライアンドエラーを繰り返しながらも、広告主に寄り添った施策を打ち出していきたい。

山田氏:スポーツは貴重なライブコンテンツ。正しく広告効果を測って価値あるものにしていきたい。メジャースポーツに限らず、高校野球などローカルスポーツはローカル局にとってはキラーコンテンツだ。ローカルエリアでもより精密な視聴率を測れるものにしていくため、サポートを続けていきたい。

池田氏:来年2020年はいよいよ東京オリンピックの年。マーケティング活動においても、単純に「面白いことができたな」では終わらず、目に見える数字で効果を確認できることが不可欠だ。TVISION INSIGHTやインテージのように、具体的なデータを提供してくれて広告効果を可視化してくれるのは心強い。引き続きサポートをいただきたい。

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