TVerオリジナル番組『最強の時間割』に見る「広告✕コンテンツ」の新しい形 〜担当者インタビュー
編集部
TVer初の完全オリジナル番組として2022年12月にスタートし、全24回にわたって配信された『TVerで学ぶ!最強の時間割』。「日経電子版」を始めとするスポンサーが協賛する形で配信されたこの番組では、さまざまな分野で活躍する“講師陣”によるメッセージが高い共感を呼び、本編中に挿入されたCMも大きなブランドリフト効果を記録した。
本記事では、日経電子版・マーケティング担当の清水耕太郎氏、今回制作を担当した株式会社毎日放送 プロデューサーの木米英治氏、株式会社TVer 配信プロデューサー兼広告事業本部の清水飛翔氏(※部署・役職は6月の取材時点)にインタビュー。番組作りを通じて得られた知見とともに、広告とコンテンツとの新たな関係性について探る。
『TVerで学ぶ!最強の時間割〜若者に本気で伝えたい授業〜』
この番組では、さまざまな業界のトップランナーが講師として登場し、高校生やこれから社会に出ていく学生、若手社会人に向けて「働き方のヒント」につながる講義を展開。“生徒”の若者たちとともに、サポート役としてラランド(サーヤ、ニシダ)、櫻坂46の山﨑天、田村保乃なども出演。毎週金曜日、半年にわたって全24エピソードを配信した。
■各局からの出向者が集まるTVerだからできる「完全オリジナル番組」
──TVer初の完全オリジナル番組として制作に至った経緯をお聞かせください。
TVer・清水氏:私はMBSからTVerへ出向しているのですが、日々業務に関わる中で、TVerは全国の放送局のコンテンツを配信プラットフォームであると同時に、各局からの出向者を通じていろんな局が交わる場としても機能していると感じていました。またそれだけでなく、元々企業マーケティングを行っていた方や技術開発者といったプロパー社員も多くおり、この貴重な場を活かして、制作の人々がそれぞれのスキルを試して頂いたり、広告を含め得られたノウハウを地上波に逆輸入するようなきっかけを作れないかと思い、TVer完全オリジナル番組の立ちあげを企画しました。
──さまざまな分野で活躍する方々を講師として招き、授業を行うという番組コンセプトはどのような思いから生まれたのでしょうか。
TVer・清水氏:安心・安全のプラットフォームであるTVerの強みを活かした良質なコンテンツのアイデアを考える中で、TVer視聴者のみなさんが日々の学びや気づきを得られる教養番組を作れないかと考えていました。木米氏は、MBSで『日曜日の初耳学』や『プレバト‼︎』など、教養色の強い番組でプロデューサーを務めていたことから、今回の企画を相談し一緒に番組としての骨子を組み立てていきました。
■WEB動画媒体「複数回接触10%の壁」を超えた、TVerのブランドリフト力
──今回、スポンサーの一つとして参加した「日経電子版」とTVerとの接点はどのようにして生まれたのでしょうか。
TVer・清水氏:かねてより日経電子版様にはTVer広告へ多くご出稿をいただいており、同時に色々な放送局が交わるTVerならではの魅力を強く感じていただいていました。新たな広告展開のアクションを探されていたところ、今回の番組企画をご提案し、賛同いただいたという形です。
──『最強の時間割』への出稿を決められた背景についてお聞かせください。
日経電子版・清水氏:日経電子版は2010年の創刊以来、毎年購読者を増やし続けています。しかし今後の持続的成長のためには、20~30代購読者の開拓がひとつの大きな課題です。これまで新聞に慣れ親しんでこなかった彼らが、新たに新聞に興味を持つきっかけをどう作るか?
以前は入社時に先輩社員や上司から新聞購読を勧められるという社会的慣習がありましたが、昨今はハラスメントに関する意識の高まりから、こうした行動は敬遠される流れにあります。
若い方たちが自ら知り、自ら検討して購読に動いていただくためのマーケティングとして、近年は若年層の接触時間が増え続けている動画プラットフォームへの広告出稿を強化してきました。
──さまざまな動画プラットフォームのなかでTVerを、さらには『最強の時間割』への協賛を選んだ決め手は何だったのでしょうか。
日経・清水氏:決定的だったのが、TVerの特性がもたらすブランドリフト効果の高さです。
私たちが1週間に見聞きした情報のうち、記憶として定着するのはわずか2割とされます。この2割に残るには、忘却前にいかに再接触できるかが鍵となります。
しかし、多くの動画プラットフォームは現在過去入り乱れて大量の動画在庫が存在しており、複数回接触が起こりづらい特性があります。広告出稿量を増やしても、十分な複数回接触はせいぜい10%程度。大半が接触回数が足りず忘却されるという負のサイクルに陥り、広告費が無駄になっていました。
一方でTVerはテレビに近い特性から“定期視聴”が起こりやすく、1人のユーザーに何度も広告を見てもらうことが可能です。過去に多くのTVer広告を出稿してきましたが、そのブランドリフト効果は十分に合格水準でした。
『最強の時間割』はTVerでしか見られない週次配信コンテンツというフォーマットで、短期間に効果的な定着を目指すという面でさらに最適と考えました。
■“良質”と“身近”の両立で20〜30代に大反響。「商材のターゲットにしっかり刺さった」
──講師陣にはフジテレビ『silent』の村瀬健プロデューサーなど、局の垣根をまたいだ方や、普段メディアに登場する機会の少ない方々が多く起用され、話題を集めました。
MBS・木米氏:講師陣のキャスティングにあたっては、メジャーかどうかという軸ではなく、「この人の話を聞きたい」とスタッフが総意で思った方にお願いしました。普段メディアに登場しない方など、オファーに苦労したところもありましたが、結果としてどなたも出演を大変喜んでくださり、TVerオリジナル番組としての特色も十分に打ち出すことができました。制作者としても、今回の番組制作で大きな経験と蓄積が得られたと感じています。
──今回ターゲットとなった若年層からの反響はいかがでしたか。
TVer・清水氏:実際にどのような層に視聴頂いているのか日々、分析を行い制作陣に共有しておりましたが、結果としてメインターゲットである20〜30代、そしてティーン層の方々にも多くご視聴いただくことができました。SNS上での反響も非常によく、多く話題に上がったことで、それを見た方が視聴してくださるという好循環につながった部分もあるかと思います。
再生数についてもシリーズ通して上り調子が続き、女優のMEGUMIさんが登場した回では約40万再生、インティマシーコーディネーターの浅田智穂さんが登場した回では約60万再生され、TVerの総合ランキングで一時TOP20に入るなど、非常に大きな成果を残すことが出来ました。
──番組ヒットの決め手はどのような点にあったと思われますか?
MBS・木米氏:「良質」と「身近」のちょうどよいバランスを取れたという点が大きかったですね。司会を務めたラランド(サーヤ、ニシダ)のお二人と講師の方、視聴者のみなさんと番組との距離感がいずれも近くてとっつきやすく、なおかつそこにカッコよさもちゃんとある。『最強の時間割』は、そんな絶妙な立ち位置の上に育ったコンテンツであったと思います。
日経電子版・清水氏:知的好奇心を持つ方が視聴者として集まってくださったように思います。「日経電子版」はまさにこうした方々に向けたサービスですので、スポンサーとしては狙い通り、メインターゲットとする方々にしっかり刺さったと満足しています。
MBS・木米氏:講師陣の中には、かつて別番組で密着取材を受けた経験を持つ方もいらっしゃいましたが、『最強の時間割』ではそのときよりもさらに真に迫った、ある意味「泥臭い」お話も披露してくださったのが印象的でした。こうした“近さ”が「日経電子版」様の広告に対する良い距離感の醸成にもつながったのだとしたら、非常に嬉しく思います。
■『最強の時間割』視聴者は“3倍”のリフト率。深い興味と利用意向の醸成に高い効果
──『最強の時間割』への広告出稿によって、「日経電子版」のユーザー数にはどのような影響が現れましたか?
日経電子版・清水氏:端的に申し上げて、狙った通りの効果が出たと感じています。今回は「日経電子版の広告をまったく見ていない人」「1〜2回見た人」「5回以上見た人」「『最強の時間割』を見た人」それぞれにおいてパーセプションの変化を計測しましたが、「『最強の時間割』を見た人」はすべての項目においてTOP1boxが高く、とくにサービスの利用意向に関しては、通常の3倍に近い高いスコアを記録しました。
先にも挙げたように、これまでのWEB動画広告では、いくら出稿量を増やしても「複数回接触10%の壁」を超えることができませんでした。その点、『最強の時間割』では、他の広告では難しかった複数回接触者数を狙って増やすことができ、かつ「深い興味」や「利用意向」までをしっかりかき立てられたことが、データの上でも立証されました。
現在、TVer広告に出稿されている多くのクライアントさんはスポット的な出稿形態が多いかと思いますが、狙ったターゲットへ確実に訴求する方法として、今回のTVerオリジナル番組への提供のような”タイム枠出稿”という手段は、とても有効であると感じています。
──地上波ライクなフォーマットでありつつ、番組尺が自由に設定できるのがTVerの大きな特長ですが、こうした点も広告面ではプラスに働いたと言えそうでしょうか?
MBS・木米氏:今回は「この分数に揃えよう」と特に強く意識していたわけではなく、講師陣の方々の人となりと考え方を2ブロックに分けたらこのくらい(約20分)になった、という感じです。でもたしかに、尺が厳密に決まっている地上波のようにワンカット、一言単位で削ったり、逆に尺を揃えるために間となる場面を付け足したりする必要がなかったので、作り手としてはとても気が楽でしたね。
──番組としてのメッセージを伝えるのに過不足ない尺で制作できた、と。
MBS・木米氏:それは大きいですね。教養番組というコンセプトで最後まできちんと見ていただくためには、ラランドのお二人から放たれる要所要所の笑いがとても重要な要素で、それをちょうどよいバランスで入れられたことは、視聴者の方々にとっても見やすさという面でプラスに働いたように思います。
TVer・清水氏:番組としては、朝8時から配信し、通勤・通学の時間帯に見ていただくことも想定していました。この時間は電車の乗り降りなど、細切れの時間が続きますから、コンパクトにパッと見られる20分という尺がうまくはまったのではないでしょうか。事実、SNS上では「ちょうど見やすい長さだ」という反響が多く見られました。
■生活動線を囲み、高エンゲージで企業メッセージを伝える「TVerオリジナル番組」
日経電子版・清水氏:20〜30代への広告アプローチを、これまでの“CM中心“から、お客様の生活動線を囲むかたちに変えていくという流れにおいて、今回の『最強の時間割』は非常に良いチャレンジになりました。ここからさらにリフト率を上げるべく、公開収録やSNS連動など、より高いエンゲージにつながる展開にもトライしていきたいと思います。
TVer・清水氏:視聴者の方からは、「この人を講師として迎えてほしい」という要望や、「学校の教材として番組を生徒に見せたい」という問い合わせも寄せられました。こうした声を踏まえて、今後は番組を軸とする横展開にも取り組んでいけたらと考えています。
「TVerオリジナル番組に提供したら、これだけの効果が得られる」という可能性を見出せたことは、番組の世界観と広告をいかにマッチさせ、違和感なく見ていただけるか、という意味で、地上波での番組づくりや広告に寄与できる部分もあるかと思います。
今回番組に賛同いただいた日経様をはじめ、スポンサーのみなさまにあらためて深く感謝しつつ、今後も色々な取り組みを続けていきたいと思います。
MBS・木米氏:これまでのテレビ制作では大人数のスタッフ、長時間の収録が当たり前でしたが、今回の『最強の時間割』では少人数のスタッフで時間をかけず、充実した収録を行うことができました。おそらく、どのテレビ番組よりもミニマムな形で制作していたと思います。こうした番組作りのノウハウを構築する、という意味でも、今回の取り組みは制作者にとっての新たなモチベーションにつながったと思います。
これがTVer以外のプラットフォームだったら、こんなには上手く行かなかったと思います。そこはやはり、各局の精鋭たちが集まるTVerという環境だからこそ、というところが大きいと思っています。私たちのような制作部隊とTVer、そしてクライアント様の新たな掛け算を示す第一号になれて、とても光栄です。
日経電子版・清水氏:今回の取り組みを通じて、広告プラットフォームとしてのTVerが持つ特性、強力なターゲティング力、リーチ力を実感しました。「TVerとガッツリ組むと、こんなにもお客様に刺さる訴求が可能なのか」と、まさに目からうろこが落ちた思いです。
また、私たちのチームでは「日経電子版 for Education」を中学・高校の教材として利用いただくなど、教育の取り組みを積極的に広げています。
今後こうした教育への取り組みに対する認知や共感をさらに集めていけるスキームづくりにも取り組んでいきたいと思います。
〜テレビ局のプロが作った番組に最適なタイミングで配信〜
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