認知だけではない! テレビCMの真価とは【2026テレビカンファレンスレポート】
ライター 天谷窓大
1月27日、渋谷ヒカリエホールで民放キー5局(日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ)の主催による「テレビカンファレンス」が開催。今回は「3つのシンカ<真価・深化・進化>」をテーマに、テレビマーケティングの最新事例や効果測定、テレビが目指すべき将来の姿が示された。
本記事では、当日メインステージにて開催されたセッション「認知だけではない!今こそ伝えたいテレビCMの本当の価値」の模様をレポートする。
このセッションでは「3つのシンカ」のうち「真価」にフォーカス。データと実践の両面から、デジタルメディアとの比較におけるテレビCMの独自性が多角的に描き出された。
登壇者は、株式会社ビデオリサーチ シニアフェローの吉田正寛氏、パーソルテンプスタッフ株式会社 執行役員 最高マーケティング責任者CMOの友澤大輔氏。モデレーターを株式会社TBSテレビ 営業局 局長の伊藤健二氏が務めた。
■データが実証する「行動誘発力」とクロスメディア効果
最初にビデオリサーチ・吉田氏が、最新のデータ分析から明らかになったテレビCMの効果についてプレゼン。認知獲得といったアッパーファネルに留まらず、興味関心から購買に至る「フルファネル」で大きな効果を発揮していることを実証した。
吉田氏によると、インターネット動画広告単体の場合、それにテレビCMを加えた場合の購買行動をそれぞれ比較分析したところ、購買や利用意向などのスコアが2倍以上に向上。特に「興味がわく」「利用・購入した」という意向は2.5倍以上のリフトが見られたとし、「クロスメディア戦略におけるテレビCMの重要性が裏付けられた」と述べた。
これに対して、TBSテレビ・伊藤氏は、「放送局の立場としてもそのような体感はあったが、ようやくきちんと数字で示せるようになってきた」とコメント。放送局側の肌感覚がデータで裏付けられたことへの感慨を示した。
「実際の来店や購買など、行動ログデータを用いた分析でも、テレビCM接触者の方が非接触者に比べて来店率が明確に高い結果が出ている」と吉田氏。「良いデータだけを持ってきたように見えるかもしれないが、実際調査するたびこのような結果になる」と語り、その再現性の高さをアピールした。
さらに吉田氏は、新規顧客獲得におけるテレビCM接触者の割合が非接触者の5倍に達したというカルビー株式会社の事例を紹介。「テレビCMは、確実に行動を誘発する力を持つ」と、あらためて強調した。
■KPI「指名検索数」から見るテレビCMのトリガー効果
続いて登場したパーソルテンプスタッフ・友澤氏は、広告主の立場から具体的な運用事例を紹介。テレビCMが強力な行動喚起のトリガーとなっている実態を明かした。
同社では、事業KPIの先行指標として「指名検索数」を重視。「指名検索は純粋想起そのものを示し、ユーザーの能動的なアクションであることから、共通のモニタリング指標に設定している」という。
「効果測定を行った結果、テレビCMが圧倒的な強さを持っていることがわかった。かつて在籍していた大手メディア企業で実施した分析でも同様の結果が出ており、メディアの効果を可視化すればするほど、『テレビの強さ』が明確になった」
「デジタル広告では複数回の接触が必要になるが、テレビCMは一度の接触で行動喚起につながりやすい」と友澤氏。「複数のメディアを横断的に利用する現代の消費者においては、テレビCMがSNS検索などの次の行動のトリガーになることが多い」と述べ、その起点としての役割の大きさを語った。
友澤氏の発言を振り返って伊藤氏は、「『データがない』と言われたところから、ようやくここまで効果が可視化されるようになってきた」とコメント。その一方で、「放送局の立場としては、こうした(可視化の)部分はまだ道半ば」と述べ、さらなる改善への課題認識を示した。
■デジタル時代に再認識される、テレビの独自価値
セッションでは、デジタルメディアとの比較を通じて、テレビが持つ価値の独自性が浮き彫りとなった。
「かつてはデジタル広告のターゲティング精度を信じていた」という友澤氏だが、「そんなに我々は万能にプランニングできるわけではない、とも考えるようになった」と近年の心境の変化を吐露。広くリーチすることの重要性を再認識した上で、「テレビCMは、スキップされることが前提の動画広告とは『受け手側の態度』が違う」と指摘した。
これに吉田氏も共感を示し、「テレビ番組というプロが制作するコンテンツの持つ熱量が、CM効果にも影響を与えている」と分析。「視聴完了率の高い番組ほど提供CMのブランドリフト効果も高まる」とする研究結果を示し、コンテンツの質がメディア価値に直結するとの見解を述べた。
「これまで、パフォーマンス追求に偏ったことで、(信用や好感度といった)メディアの『見えない価値』が損われてしまう事例が少なくなかった」と友澤氏。それを踏まえたうえで、「メディアの健全性やブランドセーフティが担保されたテレビメディアには大きな期待がある」と語った。
■未来への課題は「改善のためのデータ活用」と「直接対話」
セッションの終盤、テレビメディアが今後取り組むべき課題について議論が及んだ。
友澤氏は、「広告主が求めているのは、単なる評価ではなく『改善』である」と強調。GRP、インプレッションといった異なる指標を横断で分析できるデータ開示の必要性を訴えるとともに、「デジタル媒体のように広告主とテレビ局が直接ディスカッションし、共に改善点を見つけていく機会の創出が必要」と要望した。
「今日の話を振り返ると、課題解決のデータ活用の部分が大きいと感じた」と吉田氏は述べ、テレビが持つフルファネルへの効果を、関係者全員が共通認識として活用できる環境の重要性を指摘。「データ活用が進むことで、テレビの価値がさらに可視化され、広告主、媒体社双方にとって有益なサイクルが生まれるのではないか」と今後の展望を述べた。
吉田氏、友澤氏の提言を受け、最後に伊藤氏が「放送局側の課題もまだまだあると思います」とコメント。当事者としての姿勢を示しつ、今後の継続的な対話への意欲を語ってセッションを締めくくった。