テレ朝“AI杏寿”の取組みから見えた、宣伝的要素を感じさせない視聴誘導【前編】
09MAR

テレ朝“AI杏寿”の取組みから見えた、宣伝的要素を感じさせない視聴誘導【前編】

編集部 2018/3/9 08:00

テレビ朝日は、仲里依紗が主演する金曜ナイトドラマ『ホリデイラブ』(毎週金曜よる11:15 ※一部地域を除く)において、放送内容と連動したLINEアカウント“AI杏寿”の企画を実施。これによって、ドラマと視聴者の間にどんな関係を築くことができたのだろうか?

同プロジェクトを発案した株式会社テレビ朝日 総合ビジネス局 ビジネス戦略部 中川卓也氏とこのドラマを担当する総合編成局 ドラマ制作部プロデューサー 飯田爽氏、開発を協力したマイクロソフトディブロップメント株式会社 A.I.&リサーチ プログラムマネージャー 中島りか氏に、実施後の反響および今後の展開について話を聞いた。

■視聴者の関心を繋ぎとめる“AI杏寿”の概要とその狙い

本プロジェクトは、かねてから同社が日本マイクロソフト株式会社と行ってきた会話型AI(Chat Bot)を活用したコミュニケーション施策「あさこ(仮)プロジェクト」の実証実験を活かした取組みで、コミュニケーションアプリ「LINE」上で、AIのキャラクターになった主人公・杏寿(仲里依紗)と好きなときに会話ができるコンテンツとなっている。毎週金曜のドラマ放送終了後に、ストーリー展開に沿った“杏寿の悩み相談”が届くようになっており、その悩みに対する回答を二択から選択できるようになっている。また、水曜日にはAI杏寿の独り言が届き、再び放送日である金曜日になると、悩み相談に答えた人たちの集計結果が届く。こういったAIからの発信により、ドラマとの“接触ポイント”を増やし、かつ作品をより楽しむための施策となっている。

放送後に届く「杏寿の悩み相談」

本プロジェクトの狙いについて尋ねると、「放送と放送の間を埋める、視聴時以外の時間にファンをつなぎとめる効果を期待したもの」と中川氏。

飯田氏は、「視聴者がAI杏寿と会話を楽しむことで、キャラクターをそのドラマの座組からさらにはみ出させることができた。結果、ドラマの世界観に視聴者を没入させた双方向コミュニケーションが実現。連続ドラマのヒットに欠かせない“主人公に来週もまた会いたい”と思わせることに繋がっていると思う」とし、AI杏寿と擬似的な信頼関係を結んでもらうことにより、宣伝的要素を感じさせることなくダイレクトマーケティングを可能とする効果が得られているといった手応えが語られた。

■これまでにないAI杏寿3つの特徴

これまで他サービスでも会話型AIの活用が話題となっていたが、AI杏寿の特徴は、ドラマのストーリーと連動し、AI杏寿の感情も日々、変化した会話ができる点、毎週ユーザーに悩みを相談する点、そしてその悩みに対するAorBの回答を求めることでデータが取れる3点にある。では、AI杏寿を開始したことにより、実際にどれくらいの反響があり、どのようなデータが取れたのか。

「当初はAI杏寿に対する会話というよりは、主人公を務める仲里依紗さんへのコメントが多かったように感じた。しかし2回、3回と放送するうちに、ドラマの中の杏寿に対するコメントが寄せられるようになり、“おはよう”や“おやすみ”といった日常的会話や、自身の悩みを打ち明けるなど、友人と会話をするのと同じようなコメントが増えた」と中川氏。また、データ検証をする中島氏からは、「放送終了後は、ドラマに対する感想が多く寄せられるが、それ以後はAI杏寿をパーソナルとして認識した会話の内容が目立つ」とユーザーの利用方法について意見した。

■SNSとは異なる新たなテレビ視聴スタイル

実際にデータを見せてもらうと、男女比は1:9で圧倒的に女性のユーザーが多く、F1を中心とした女性の利用者が目立つ。

また、放送中は会話が減り、放送後に再び会話が開始されるなど、テレビ視聴時のソーシャルメディア利用が増加している昨今の状況とは異なる結果が出た。中川氏は、「テレビの楽しみ方の一つにSNSを介した共有体験があるが、AI杏寿は多数で楽しむものではなく、1対1のコミュニケーションツールとなるため、このような結果が出たのではないか」と分析。中島氏は「他サービスに比べると、LINEのブロック率も極めて低い」と指摘し、飯田氏からは、「放送後、水曜日、金曜日とAI杏寿からメッセージを送ることでユーザーに没入感を与え、期待していた視聴者の気持ちをつなぎ止めたり、今日が放送であることを間接的にリマインドさせたりする効果が見受けられた」と、視聴者をつなぎとめ、視聴にうながすサポートができていると指摘した。

■最終回に向けたさらなる施策がいよいよ情報解禁に!

AI杏寿の活用により双方向コミュニケーションが実現したことで、視聴者の関心を翌週までつなぎとめ、間接的なアプローチで視聴へと結び付ける効果があることが、今回の施策でわかったのではなかろうか。そして同プロジェクトでは、最終回に向けたさらなる施策が用意されているという。続く後編では、情報解禁となったばかりのこれまでにない新たな施策と、今後の事業展開についてお伝えしたい。

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