ここが変だよバリアフリー!日本とイギリスのテレビ制作の違い【シェイク!Vol.15】

編集部

業界の異なる3人が繰り広げる白熱トークセッション「シェイク!Vol.15」が、2月28日に株式会社IPGの本社(東京都中央区築地)にて開催。2018年一発目となる今回のテーマは、「ここが変だよバリアフリー ~障がい者とメディアの距離感と手ざわり~」。中でも今回は、日本とイギリスのテレビ制作の違いにスポットを当てて伝える。

出演者は、『バリバラ』(NHK Eテレ 毎週日曜19:00~)の立ち上げに携わり現在は、『Rの法則』(同局 毎週月曜日~木曜18:55分~)を担当する、体幹機能障害を持つNHK制作局第1制作センター青少年・教育番組部ディレクターの空門勇魚(そらかどいさな)氏、グラフィックデザイナー兼大学研究員の、脳性麻痺のあるライラ・カセム氏、そしてモデレーターは、同セッションでおなじみの博報堂DYメディアパートナーズ メディアコンテンツクリエイティブセンター 森永真弓氏が務めた。

■国民性の違いはあれど、番組作りで重要なのは制作者の意図

冒頭、空門氏の自己紹介VTRの中で、様々な障害者が利用することを考えて設計していない公共施設のバリアフリーについて触れると、話題は街中にある“バリアフリー化はされているが、使用するには不都合”な設備や、障害者に向けられる、日本人特有の過剰過ぎる思いやりの言動といった体験談で盛り上がる。思春期から10年近くイギリスに移住した経験があり、つい先日も滞在していたというライラ氏は、「エレベーターの設置数など東京の方が圧倒的にロンドンよりバリアフリーは充実している。しかし、障害者に対しての接し方に関しては、イギリス人の方がフラットである」といった、国民性の違いが語られた。

そこから話題はメディアに及び、障害者のための情報バラエティー『バリバラ』の立ち上げに携わった空門氏が、「福祉の番組となると、日本のメディアでは“重い障害を背負っていても、さまざまな壁を乗り越えてこんなに頑張って生きてます!”といった“感動ポルノ”という作りに慣れ過ぎている」と指摘。森永氏から、「イギリスではどうか?」と尋ねられたライラ氏は、「イギリスでも20年前位から取りあげられていた問題」とした上で、「しかし最近では、ようやく車いすの女優や戦争で下半身不全になったレポーターが普通にテレビに出るようになった」ほか、「先日の帰郷でも、ポテトフライのCMを見ていたら、同性愛のカップル、知的障害のカップル、車いすと健常者のカップルのシーンが普通に流れていた」と報告。イギリスでは今、人種、ジェンダー、障害、セクシュアリティ、貧困といった不平等や格差はすべて関連しているという“インターセクショナリティ”がホットキーワードだと語り、イギリスではその中核となるのが「障害」ではないのかという議論がはじまっているという。

障害者のメディアの露出に関していうと、イギリスの方が進んでいるのかもしれないが、結局は「制作者の意図するところ、最終目的がきちんとしているか」が重要であると空門氏は意見した。

他にも、平昌パラリンピックの開催時期やパラリンピアンの番組出演の仕方について、R1ファイナリストになった盲目の漫談家・濱田祐太郎氏の活躍に期待する話、海外のコミコンでは個性を活かしたコスプレを楽しんでいるといった報告がなされ、予定時刻を大幅にオーバーする盛り沢山のトークセッションとなった。

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