テレ東『池の水』の伊藤Pが語る「テレビマンとしての使命」<シェイク!Vol18>
20JUN

テレ東『池の水』の伊藤Pが語る「テレビマンとしての使命」<シェイク!Vol18>

編集部 2018/6/20 09:30

異なる業界からスペシャリスト3名を集めて繰り広げる白熱のトークセッション「シェイク!Vol.18」が、株式会社IPGの本社(東京都中央区築地)にて5月25日に開催された。登壇者は、大人気番組『池の水ぜんぶ抜く』シリーズの仕掛け人、テレビ東京プロデューサーの伊藤隆行氏(写真:中央)。「ぷよぷよ」の生みの親で、アナログゲームの創作やライターなどマルチな顔を持つ、ゲーム作家の米光一成氏(写真:左)。「5歳児が値段を決める美術館」や「6歳ラジオ」など毎年、思い出作りも兼ねて息子の年齢でコンテンツを制作することで有名なほか、「変なWEBメディア」「しゃべる名刺」などデジタルコンテンツの企画にも携わるアートディレクター/プランナーの佐藤ねじ氏(写真:右)の3名という豪華な顔ぶれだ。

テーマは、「どうしたら作れる、面白い企画」で、同メンバー・同テーマでの開催は、今回で4度目となる。息もピッタリなヒットメーカー3氏の「面白い企画」はどのように作られているのか、を届けする。

■伊藤P、企画が初めて通ったときにヒントにした上司の言葉

人気コンテンツを数多く世に送り出している3氏は、どのようにしてヒット作を生み出してきたのか。

伊藤氏は、初めて企画が通ったときのことをこう語る。「入社して2年弱、毎週企画を出すもすべて却下され、千本ノックのようにアイデアを量産していたが、まったく企画が通らなかった」と。しかし、そんなある時、尊敬していた上司から飲みに誘われ同行したところ、「お前は自分が天才だと思うか?」と尋ねられ、伊藤氏は「滅相もございません」と返答した。すると上司から、「商品を出す奴が天才じゃないと答えるのは失礼だ」「1%は天才でいいから99%は常識人でいろ」と叱られた、と話した。伊藤氏は、「1%だけ天才でいい」というその上司の言葉をヒントに、「自分でしか感じたことのない何かで企画を考えよう」と決意。そして閃いたのが、記憶を辿った高校時代のエピソードからヒントを得た企画だった。以来、コンテンツ作りには「自分が見て感じたことを大事にしている」と話した。

■タイトルやネーミングの付け方とネタ帳の使い方

ねじ氏は、「普段からコンテンツのヒントになりそうなネタをメモしている」と言い、「その中から残すネタには、いつもいい意味での“違和感”を覚える」と発言した。すると伊藤氏も、「ネーミングを付けるときは人の印象に残るものを意識している」と、ねじ氏の発言にあった“違和感”に同意を示し、先に話題となった映画『万引き家族』のタイトルは、「相反する2つの言葉の連なりに意表をつかれたが、惹きつけられるものがある」と例を挙げた。

米光氏もこの話題に加わり、「僕はそのまま、ストレートなタイトルが好き」と、自身が制作した「ぷよぷよ」は、「始めは仮題だったけど、完成する頃にはみんな“ぷよぷよ”と言い慣れて愛着を持っていたため、コードネームのまま発売した」とネーミング秘話が語られた。同様に、この春発売した「はっけよいゲーム」や「はぁって言うゲーム」の命名についても、「素直に付けた名前の方がゲームの内容と一致するし、覚えてもらったら勝ち」とコメントした。ねじ氏も、「ネットではタイトルでコンテンツの意味が分かるようにした方がシェアされやすい」と語った。

その流れで伊藤氏から、「僕は思いついたキーワードがあれば手帳に書いている」と、持参した手帳を開き説明。そこには丁寧に書かれている文字もあれば、「自分でも読めない」と笑ってしまうような走り書きまで、空きスペースなくスケジュールとキーワードで埋め尽くされた手帳が公開された。中でも気になったキーワードとして、「食べ残しの番組」「イヤホンバカ」「キャンプしたけどあんた誰」といったものがあり、日々起こる様々な出来事や気持ちが書き出されていた。伊藤氏は、「時おり整理してコンテンツ作りに役立てている」と話した。

■テレビマンとしての使命

最後に伊藤氏から、自身でも最近考えるようになった「何で仕事をしているのか」という問いを2人にも聞いてみたいと質問がなされた。

まずねじ氏は、「大きな賞を取ったり、世界を変えたりしたいなんて大それたことは言わないが、自分が面白いと思うものを世に出して、それに対しどんな反応があるか……こうした繰り返しを少しでも長く続けるのが目標」と言い、「大ヒットは作れなくていいけれど、自分らしい小ヒットを何点作れるのか、それが自分の中の価値としてある」と。これに加えて、「ちょっとだけ新しいものをずっと作っていける状態をどう構築するのか、ネットにこだわらず、その時々自分ができる状況でもの作りに携わり、反応を得ることをやっていきたい」とまとめた。

次に伊藤氏は、「40歳を過ぎた辺りから“テレビマン”としての自覚が芽生えた」と言い、「テレビマンとして仕事する以上、日本人のためになることを、見た人に影響を与える、面白い番組を届けたいと思うようになった」と続けた。それには、昨今のテレビ制作の意図するところが、視聴者の求めるものとは異なる場合がある点を例に挙げ、「本当にそれでいいのか」と思うようになったことが関係している、と。そうした背景から、今回のシェイク!では、「進化するものに対して逆のことを成して創造的破壊を起こしているお2人に刺激を受けた」と言い、「流れてきた延長線上にあるものを壊さなければ、違うベクトルの新しい感性は生まれてこない。テレビという大きなメディアがそれをやれるっていうのは面白い」と述べ、昨今、注目されているAIアシスタントが近い未来、どの家庭にも導入されるようになった暁には、「面白いテレビが観たい」という人間のリクエストに対し、「自身が制作した面白い番組が映ったら嬉しいし、そういう番組を制作したい」とコメントした。

最後に米光氏は、「僕はねじ氏と真逆で世界を変えたいと思っている」と発言。ただ、「誰もが満足するようなヒット作品を生み出すことは目指していない」と言い、自身が目指しているのは、「既存ルールを1つや2つ変えて、足したり引いたりしながらみんなの気持ちを変える」こと。つまりは、「ゲームを通じて人のルールや意識がちょこっとでも変わるといいな」と思いながら仕事に取り組んでいることが伝えられ、今回のシェイク!は終了した。

伊藤氏の「テレビマンとしての使命」が特に印象的だった今回のトークセッションだったが、真のテレビマンが今後どのような番組を制作し、影響を与えていくのか。実際、第1弾シェイク!で語った「池の水を全部抜いたら面白いのでは……」という伊藤氏の発言が、続く第2弾のシェイク!では番組となり形になっていた。それを思うと、今回のシェイク!で語られたアイデアの中から、新たな番組が誕生するのもそう遠くないのかもしれない。

番組制作の裏側には、伊藤氏のように常にテレビのことを考え、向き合うテレビマンたちがいることを知った今回のシェイク!であった。

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