VRと電通、視聴者の生活様式や視聴行動をクラスタ化したデータを提供開始
編集部
ビデオリサーチ(以下、VR)は26日、生活・メディア行動調査データMCR/exを活用した「ソーシャル・シークエンス分析サービス」の提供を開始したことを発表した。
MCR/exとは、ビデオリサーチが1997年から毎年行っている生活者行動の総合的なデータベースのこと。特定の1週間の基本的な生活行動とメディア接触行動について、日記形式にて、15分単位で記録したデータが時間軸に沿って収録している。
「MCR/exデータ」を活用した「ソーシャル・シークエンス分析」の取り組みは、2017年より株式会社電通(以下、電通)のシンクタンク「電通メディアイノベーションラボ」と共同で研究を進められてきた。この分析により、特定のターゲットや商品・サービス利用者の日常生活行動やメディア接触行動の全体像が、これまで以上により詳細に可視化・把握できるようになる。また、メディア接触行動に基づいた詳細なクラスタリングが可能となる。なお、本分析についてはVRの社内研究所である「ひと研究所」が実施する。
■VRと電通の過去の取り組み
過去に実施されたMCR/exデータ活用したソーシャル・シークエンス分析の取り組みとして、30種に及ぶ「メディアライフスタイル」の分析がある。これは、東京50キロ圏に住む生活者を、自宅内・外での各種メディア・機器接触行動を672時点(7曜日×24時間×15分刻み)で分析し、7グループ・30に及ぶメディアライフスタイル(=メディア接触習慣)に分類したもの。
■生活者の行動の可視化
MCR/exの日記形式の生活行動データ(15分単位)を元に、生活者ひとりひとりの日常生活行動やメディア接触行動が時系列に並んだ「シークエンスデータ(=連なったデータ)」を作成することによって、「ソーシャル・シークエンス分析」を実施することができるようになる。
このように、個人ごとの「シークエンスデータ」を作成した後、15分ごとの行動データを集計・グラフ化することで、生活者の行動が可視化。横軸が15分ごとの時間帯、縦軸がその時間帯での各行動についての行動率を表している。これにより、今まで以上に生活者の日常生活行動・メディア接触行動の全体像の把握が容易となる。
上図からは、朝の7時、夜の22時前後でテレビのリアルタイム視聴(水色)の行動率が高くなることが分かる
また、上図からは月曜日から金曜日までは似た形になり、規則性が強くあることが分かる。さらに、土曜日、日曜日は日中のテレビのリアルタイム視聴(水色)の割合が平日より高いことが分かる。また、テレビのタイムシフト視聴(赤)の割合も高くなっている。
■生活者のクラスタリング
個人ごとの「シークエンスデータ」の類似度から、似た行動パターンを持つ生活者をグルーピングしていくことで、時間帯による行動率の違いも考慮したかたちで、日常生活行動・メディア接触行動による今までにない生活者クラスタリングが可能となる。下図はクラスター例だ。
生活者のメディア接触行動の分析結果から、特にテレビ視聴時間の長さや視聴タイミングによってクラスターの特徴は異なる。これらを当社のシングルソースデータであるACR/ex(VRが毎年行っている、生活者の現状と変化を「人」「ブランド」「メディア」の3つの視点で捉えたシングルソースデータデータ)と紐付けることも可能。
例えば、ACR/exデータより、“缶コーヒー飲用者(最近3ヶ月以内に缶コーヒーを飲んだ人)”という切り口で見てみると、32%がクラスター③「スマホシフト型クラスター」で、27%がクラスター②「タイムシフト積極型クラスター」であることが分かった。これらを合わせると約6割にのぼる。
本結果から、缶コーヒーのメディアの出稿などのコミュニケーションを検討する場合、缶コーヒー飲用者がこの2つのメディア利用パターンで過半数を占めることを軸に、具体的なプランニングを進めていくことが効率的かつ効果的であることが示唆される。
メディア利用が多様化・複雑化するなかで、商品やサービス利用者を単純に一様に捉えるのではなく、いくつものメディア接触行動パターンを把握して、そのパターンへの対応を分析。各企業の課題に応じた、より精緻なメディアプランニングに活かすのが本取り組みのねらいだ。