テレ朝入社4年目社員が顔になるオンラインサロン「CREATOR’S BASE」(前編)
テレビ業界ジャーナリスト 長谷川朋子
テレビ朝日は同局初となる「オンラインサロン」として、 クリエイターを志す若者の拠点「CREATOR’S BASE」(クリエイターズ・ベース)を8月20日にオープンした。昨今、キャリアアップや健康、財テク、趣味などあらゆるテーマの月額会費制のオンラインサロンが立ち上がり、様々なプラットフォームで運営されているが、テレビ局がクリエイターを支援するオンラインサロン事業に参入する狙いは何か?「CREATOR’S BASE」のオーナーとして管理者を務める、テレビ朝日入社4年目の同局総合ビジネス局デジタル事業センター西脇由希子氏に話を聞いた。
■時代に合わせて、コミュニティサービスにも着眼したビジネス展開
テレビ朝日が8月20日より運営を開始した「CREATOR’S BASE」は、クリエイターを目指すミレニアル世代 (1980年~2000年初めに生まれた若者)を対象とした会員制コミュニティサービスとなる。オンラインサロンの運営主体は個人から専門家、芸能人など多岐に及んでいるが、なぜテレビ局がこうしたコミュニティを立ち上げることになったのだろうか。まずは立ち上げのきっかけから西脇氏に尋ねた。
「テレビ局は従来、マスメディアとして世の中に溢れている情報を発信し、広くいろいろな方に情報を届けてきました。一方で、最近は細分化されたコミュニティの中で話題になった情報がボトムアップするようなかたちで世の中に広まっていくような動きもみられます。ツイッターのトレンドなどはまさにそうですね。そうしたなかで、テレビ局もこれまでのように情報を降らせるだけでなく、時代に合わせてコミュニティにも着眼点を持って、ビジネスとして立ち上げたいという思いがそもそものきっかけです。テレビ局はコミュニケーションを軸とした会社でもありますから、理にかなっているとも言えます」
西脇氏が所属する総合ビジネス局デジタル事業センターは新規事業を見出していくことをミッションとする部署でもあり、模索していくなかで、企画したものだという。そのなかで、入社当初からあった「テレビ局の新しいチャレンジを後押しすることに携わりたい」という西脇氏自身の想いも込められた。
「4年前に入社し、昨年の7月に技術局から現在の総合ビジネスデジタル事業センターに異動になって、私なりにどのような新しいことができるのだろうかと思った時にオンラインサロンの存在を知りました。その時、テレビ局の新しいチャレンジに後押しすることに繋がるビジネスになるのではないかと思いました。立案したものを肉付けしながら、数か月の準備期間を経て、オープンすることができたのは、所属する部署をはじめ、社内が一丸となって応援してくれる有難い環境にあったことも大きいです」
テレビ朝日が2017年度から2020年度までの新経営計画として公表している「テレビ朝日360°」は、コンテンツを「全ての価値の源泉」として核に、テレビ、BS、CS、インターネット、メディアシティの5つの分野が360度の全方位で取り巻く方針を掲げている。インターネット分野ではAbemaTVやKDDIと協業するビデオパスなどの事業が進められており、今回立ち上げた「CREATOR’S BASE」はいろいろなメディアで展開していくなかでのひとつの方向性としてコミュニティサービスに参入した事業となる。インターネット分野では若い世代に向けた新しい取り組みも重視していることから、若手社員の視点も積極的に取り入れ、今回の事業は西脇氏が中心となって動いている。
■本当は、「好き」を仕事にしたいミレニアル世代がターゲット
稼働後の「CREATOR’S BASE」の西脇氏の役割はサロンのオーナー的存在として、AbemaTV業務と兼業しながら管理者を務めている。自身も会員の対象である1980年から2000年はじめに生まれたいわゆるミレニアル世代であり、「CREATOR’S BASE」のコンセプトである「本当は、『好き』を仕事にしたい。もっとクリエイティブに生きたい」に共感するひとりであるという。
「私の身の回りの同じ世代と接するなかで思うことがあります。デジタル時代のなかで5年前や10年前は想像もできなかったような職業が生まれ、会社に属する以外の働き方を希望する声もたくさん聞かれます。でも、『どうなりたい』という明確な像はつかめないまま。同じ想いを持って、仲間と同じ方向に向かうことができる場所があれば、クリエイティビティを育てることができるかもしれません。ミレニアル世代に限らず、コンセプトに共感していただける方ならどなたでも歓迎します。一緒に成長することができる場を目指します」
「好き」を仕事に!テレ朝、ミレニアル世代向けオンラインサロン始動
具体的な活動としては、各界で活躍する若手クリエイター陣によるセミナーイベントを軸に「好き」を仕事にする方法や才能の育て方を発信していく。会員は講座の聴講をはじめ、会員同士のコミュニケーションを通じて情報交換をしたり、イベント開催中に出される課題に取り組むことで、講師から直接具体的なアドバイスを受けたりすることができる。プラットフォームは合同会社のDMM.comの運営する「DMM オンラインサロン」内に開設されている。DMMと連携した理由についてはこのように説明してくれた。
「オンラインサロンの運営のかたちをいろいろと探るなかで、業界で高いシェアを占めるDMMさんのプラットフォームをお借りすることにしました。既に運営のノウハウを持っていらっしゃるので、我々だけでは気づけなかったこともアドバイスしていただいています会場もDMMさんがお持ちのイベントスペースを提供してもらい、イベントの模様のライブ配信もパッケージ化されたDMMさんの仕組みを使わせてもらっています」
9月からは、講師を招いたイベントも定期的に開催されている。テレビ朝日が新たな事業として運営するオンラインサロン「CREATOR’S BASE」が走り出した。後編は講師の選定や会員状況、「CREATOR’S BASE」の今後の方向性などお伝えしたい。