ビデオリサーチが取り組む「新視聴率計画」の“現在地とこれから”【VR FORUM 2019】
15MAR

ビデオリサーチが取り組む「新視聴率計画」の“現在地とこれから”【VR FORUM 2019】

編集部 2019/3/15 11:07

株式会社ビデオリサーチ(以下、ビデオリサーチ社)は、2月13日・14日に東京ミッドタウンにて「VR FORUM 2019」を開催。企業のデータ利活用が活発化する現在、データ収集および統合などがますます加速している中、今後重要となってくるのは、データの量や種類ではなく、企業が求める形に応じて各種データをいかに最適化できるかにある。そうした課題点を鑑みた4回目となる同フォーラムのテーマを「Data Orchestration」とし、2日間にわたり同社が考えるテレビの未来や、新視聴率計画をはじめ、各種メディアとの取り組み、デジタルマーケティング施策へのソリューションサービス等を紹介する催しとなった。

昨年のVR FORUMでは、これからの視聴率というテーマでビデオリサーチの見解を紹介したが、あれから1年、どのような進捗があったのか。同テレビ事業局長の橋本和彦氏のセミナーでは「新視聴率計画」の現在と新たな論点が示された。

■2020年に向け、段階的に整備が進む「新視聴率」

ビデオリサーチ社の「新視聴率計画」は、生活者の多様化、デジタル化によって生じている“テレビ視聴の分散化”に対応し、テレビメディアの価値を正しく示すことを目的としている。そこで、「テレビコンテンツをマルチデバイスで測定し、誰が、いつ、どこで、どのようにテレビコンテンツに接触しているのかを、代表性をもつ調査設計で正しく測定し、日々可視化していく」と橋本氏。それに向けて、「全地区での視聴率52週化」「全地区での個人視聴化」「多様化するテレビ視聴と生活者の把握」に取り組んでいるという。

同社の「新視聴率計画」は、2016年10月、関東地区での調査世帯数を900に拡大し、タイムシフト調査をスタートさせたことを皮切りに、段階的に進められている。
2017年には、全地区の世帯あたりのテレビ測定数を、最大3台から東阪名の3地区と同じく8台まで拡大。2018年には関西・名古屋でもタイムシフト視聴の測定が始まっている。2019年4月には北部九州地区で調査世帯数を現状の200から400(個人約950人)に拡大したPMによる機械式個人視聴率調査を開始する。このPM調査は、2020年4月には全国に拡大する予定(200から400世帯への拡大は北部九州地区と札幌地区まで)で、タイムシフト視聴の調査も全地区で対応していく。
さらに、動画配信に関しても調査を開始するという。また同じく2020年4月には、全地区で視聴率52週化をスタートする。現在の非調査5地区においても計測を開始し、全国データの算出に活かされる。なお、非調査5地区の地区別視聴率の実施も、当該地区の放送局と意見交換して進めていくという。

「新視聴率」から、どのような知見が得られるのか。直近の分析結果も一例として紹介された。関東・関西・名古屋で先行されているタイムシフト視聴のデータから、地域特性が見られるという。「関西は、男性20歳~34歳のバラエティのタイムシフト視聴が多い。同地区では独自の深夜バラエティが放送されており、関東地区の深夜バラエティはその後に放送されるため、関東ネットの深夜バラエティがタイムシフト視聴になっている視聴者が多いようだ」と橋本氏。各地区で視聴データを揃えていく必要性を改めて示唆した。

■調査設計と提供指標を統一した全国データのポテンシャル

セミナーでは、「新視聴率」をどのように活用するかについても言及された。一つは、ADVANCED TARGET(アドバンスドターゲット)のマーケティングとしての活用である。関東地区は、2030年までの人口動態を見据え、PM調査の対象を現状の900世帯・約2,250人から、2,700世帯・約6,800人まで拡大を目指すという。

具体的には、性年齢別5歳刻みの各セルで100サンプルが目標とのこと。「ライフステージ」「年収・職業」「生活意識・商品関与」など、性年齢区分以外の切り口で視聴率を分析できるよう、サンプルを拡大する。なお、「生活意識・商品関与」の情報を付与するにあたっては、ACR/exとのデータフュージョンを行うという。「サンプル数の拡大で、より絞ったセグメントに対応できる。高齢化、ライフスタイルの多様化といった“変化”を表せるような視聴率を提供したい」と橋本氏は可能性をアピールする。

また、全地区の調査設計と提供指標を統一化した「新視聴率」によって、日本全国を表現するデータの具現化に取り組むとのこと。その一つが、「視聴人数」という新たな表現である。
視聴人数を表すことで得られる知見については、現在検証が進められている。その一例として、某人気アーティストのネット動画と番組出演の事例が紹介された。同アーティストはネットでの動画視聴が10ヶ月で2.2億回だったが、某テレビ番組への6分間の出演で、テレビのリアルタイム視聴が約3,900万人(※)、放送後7日間のタイムシフト視聴が約4,300万回(※)あった(※現在は推計データ)。このケースに代表されるように、テレビのリーチ獲得は、効率やスピード感がネット動画を上回っているという見方もできる。「視聴人数は、テレビのポテンシャルを示す指標になりうる」と橋本氏は期待を込めた。

放送局由来の動画配信についても、オンエア(リアルタイム/タイムシフト)と、オンライン(キャッチアップ/放送同時配信)を統合した指標を出すため、整備を進めていくという。

その実現に向けて、視聴率調査対象世帯内の個人に対して、PC、タブレット、スマートフォンから、Cookie、ADID/IDFAの取得の依頼を始めている。

ここで得られたデータをもとに、データの拡張技術によって全数を推計。オンエアとオンラインによる「トータルリーチ数」「トータル視聴人数」を表現するとのこと。

これらのデータの価値を検証するため、ビデオリサーチ社は「VR CUBIC」(テレビとネットのシングルソースを提供するサービス)で試験的に分析している。

ビデオリサーチ社はリアルタイム視聴、タイムシフト視聴、さらにはキャッチアップコンテンツの視聴を含めて、番組コンテンツのトータルでのリーチがどれくらいかについての確認作業を進めている。
それによると、タイムシフトやキャッチアップのコンテンツから、リアルタイムに回帰する現象が見られたという。橋本氏は「テレビコンテンツそのもののパワーを測る上で、トータルのデータは指標になりうる」とした。

このほか、新視聴率による全国データからのBS視聴データの提供も検討している。その背景には、視聴率調査で「その他合計」としている部分の視聴量が年々拡大していること、この中に占めるBS視聴の割合は高いと想定されること、があげられるという。

「全国一波というBSの特性と、新視聴率が新たに示す「全国視聴率や推定全国視聴人数」という考え方は繋がるのではないか」と橋本氏。将来的には、広告媒体としてのBS放送の価値も示したいと語った。

■“実数データ”で、テレビメディアの価値を示す

橋本氏からは、新視聴率のその先の展望についても語られた。セミナーでは調査結果をもとに、テレビのネット結線率が増加傾向にあること、テレビのモニターで大手プラットフォーマーの動画配信の利用経験が増える傾向にあることが示された。これを受け、将来的には放送局由来の動画配信に加え、動画配信の大手プラットフォーマーも含め、分散したテレビ視聴を集約。生活者のすべてのコンテンツ視聴の把握を目指すという。この実現に向けて、生活者のテレビモニターと世帯内のモバイルでのコンテンツ視聴を把握するため、通信状況を捉えるセンサーの開発に着手しているとのこと。

また、ビデオリサーチ社では、オンライン・オフライン統合時代の調査データに向けて、新視聴率調査をベースにした“実数データ”の活用も考えている。

テレビにおける“実数データ”は、テレビメーカーログや放送局別の視聴ログなど、インターネットに結線されている上位機種テレビから数十万単位で集まってくる大規模のテレビ視聴データを意味します。

このビッグデータでわかるのは、テレビ単位での視聴の集計に過ぎない。そこへ、新視聴率によるパネルデータをフュージョンし、代表性をもとにした視聴傾向の補正、個人視聴データ化、番組情報の付与で、“実数データ”を補完。これによって、家族構成別の視聴を集計し、さらに個人特性での視聴集計、個人ごとのCM接触判定まで実現する。

この“実数データ”には、ACR/ex(「生活者属性」「商品関与」「メディア接触」をシングルソースで捉えるサービス)のデータを付与し、個人プロフィールでの視聴集計も可能とのこと。番組はもちろん、CMの視聴者分析にも役立てられるという。「CMの出稿情報のデータベース化も、取り組みの一つの大きな要素」と橋本氏は展望を述べた。

最後に「ビデオリサーチ社は創業時から、テレビの変化や視聴の変化を追いかけて、テレビメディアの特性を捉えてきた」と橋本氏。

今後も変化に対応し、“実数データ”を示すことで、そのミッションを遂行する旨を語り、「2020年に向けて、テレビ視聴データの拡張を進めていく」と結んだ。生活者のテレビ視聴状況について解像度が上がることで、見えてくるものに期待したい。

https://www.screens-lab.jp/article/14407

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