TVerのユーザー数と広告は、なぜ右肩上がりで伸び続けているのか?〜Ne Plus U 2021セッションレポート
編集部
株式会社TVer 広告営業部長・古田和俊氏
株式会社ナノベーション主催のカンファレンス「Ne Plus U 2021 (ネプラス・ユー 2021)」が2021年10月7〜8日、東京・有明セントラルホール&カンファレンスにて開催。「知識と情報、経験を繋ぎ、共創を生み出すこと」をテーマに、リアル・配信含め1,000人以上のマーケターを対象としたカンファレンスが実施。今回はこのなかから、10月7日に開催されたセッション「TVerのユーザー数と広告は、なぜ右肩上がりで伸び続けているのか?」の模様をレポートする。
<INDEX>
■TVerユーザー急増の背景にある「3つの施策」
■コネクテッドTV経由の視聴がPCを逆転。各種テレビデバイスへの対応も着々
■「TVer広告」右肩上がりの背景にある「3つの強み」
■安全性が担保されたコンテンツに対し、最適化された広告ポジションで配信
■ファーストパーティーデータを用いた高精度ターゲティング
■高い完視聴率を活かして「完全視聴(CPCV)課金広告」を導入
■「TVer広告×テレビCM」の相乗効果で大きなブランドリフトを創出
■10月よりTVerでの地上波同時配信が本格スタート。「ログイン機能」も実装予定
ユーザー数拡充に向けたTVerの現在の取り組みをはじめ、コネクテッドTV(Connected TV、CTV)への対応状況、また2020年10月にリリースした運用型広告プラットフォーム「TVer広告」について、株式会社TVer 広告営業部長・古田和俊氏が登壇した。
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■TVerユーザー急増の背景にある「3つの施策」
「TVerにおけるユーザー増加スピードが加速傾向にある」と古田氏。2021年8月15日にTVerのアプリが累計4,000万回ダウンロードを突破したが、500万ダウンロードに達するまでに要した期間について、2016年12月時点では14ヶ月であったのに対し、2020年2021年2月時点では5ヶ月、2021年8月時点では6ヶ月と、大きくスパンを縮めている様子を説明した。
ユーザー急増の背景の要因のひとつとして、古田氏は「正規品の価値」を強調。テレビ番組の違法アップロード動画において見受けられる「シーンが切り取られている」「タイトルと内容が異なる」「画質が極端に悪い」といった問題点に対し、「民放公式テレビポータルであるTVerでは、すべて権利処理をクリアした公式動画を高画質で楽しめる」といい、「こうした点がユーザーに支持していただけている」と語る。
「もうひとつの要因」として古田氏が挙げたのは「番組数の増加」。現在TVerでは400番組以上がレギュラーコンテンツとして配信されているほか、東京2020オリンピックでは、大会の公式競技動画を特設サイト「gorin.jp」にてライブ配信。同コンテンツはTVerからも閲覧でき、「非常に多くのユーザーにご利用いただいた」と語る。
続いて古田氏は、TVer上での「特集企画」についても紹介。
2021年10月期には、俳優の窪田正孝、米倉涼子が出演するドラマを特集して配信。民放公式ポータルの強みを活かし、民放各局から番組提供を受けることにより、ユーザーに対して満足度の高いコンテンツを展開していることをアピール。最近では、新ドラマの予告動画をつなぎ合わせての配信など、「見逃しに限らず、将来のコンテンツのご案内にも力を入れている」とした。
■コネクテッドTV経由の視聴がPCを逆転。各種テレビデバイスへの対応も着々
続いて古田氏は、コネクテッTVを経由した視聴者の増加についても言及。2021年に入って、PC経由の視聴割合(20.3%)をコネクテッドTV経由の視聴割合(22.7%)が逆転。新たな視聴手段として、コネクテッドTVが存在感を増し続けていると語る。
TVerでは、2019年4月よりコネクテッドTVへの配信を実施。対応デバイスも、SONY・Amazon・SHARP・J:COMなどのテレビアプリを皮切りに、Panasonicのスマートテレビ「VIERA」や、Googleのテレビデバイス「Chromecast」などに順次対応が進んでいる。
2021年4月には、J:COMのセットトップボックスのリモコンに「TVerボタン」が追加されたほか、船井電機の4Kテレビでは番組表(EPG)画面からTVerへと直接ジャンプできる機能が搭載された。
■「TVer広告」右肩上がりの背景にある「3つの強み」
続いてプレゼンは、運用型広告プラットフォーム「TVer広告」の話題へ。
2020年10月のスタート以降、売上は右肩上がりに成長しており、「2021年4月の本格スタート以降は、案件数、売上金額ともに前月超えをキープしている状況」という。
■安全性が担保されたコンテンツに対し、最適化された広告ポジションで配信
「『TVer広告』の特徴は『安心安全な番組コンテンツ』と『コネクテッドTVへの配信・ファーストパーティーデータ(ユーザーの許諾を得た1次属性データ)』『高い視聴完了率による広告認知』にある」と古田氏。
「安心安全な番組コンテンツ」という特徴について、古田氏は昨今のネット上における不適切動画、「ファスト映画(映画を無断でダイジェスト編集・ネタバレさせた動画)」などの事例や、不適切な内容の広告コンテンツの氾濫問題に言及。それを踏まえたうえで、「TVerのコンテンツは放送基準に則って各放送局が適切な表現かをチェックしており、十分に安心して広告を掲載していただけるもののみを配信している」とアピールした。
さらに、「TVerのコンテンツにおける広告ポジションは、本編開始前の『プレロール』、本編中の『ミッドロール』、本編終了後の『ポストロール』と細かく設定されている」と古田氏。「広告が入る前提でコンテンツが作られているというより、『広告を含めてコンテンツとなるよう作られている』」といい、「ユーザーが不愉快に感じないタイミングに広告ポイントを設定しているため、広告に対する抵抗が非常に少ない」と強調。
「広告ポイントが最適化されていることに加え、広告がスキップできない仕様のため、CMに対する完視聴率も非常に高い」と古田氏。「広告掲載にあたっては出稿元の業態考査を厳密に行っているほか、入稿された素材についても人力で細かな表現チェックを行っている」といい、「不適切な広告と隣接して自社の広告が流れるということがない」と、広告としての高い安全性をアピールした。
■ファーストパーティーデータを用いた高精度ターゲティング
「TVerにおけるコネクテッドTVでの視聴割合は2020年2月には7.5%であったが、2021年2月には22.7%と、1年で約3倍に急成長している」と古田氏。「非常に見やすい大画面でコンテンツを視聴できることはもちろん、元々のコンテンツもテレビでの視聴を前提としたものであるということが、急激な増加の背景にある」と語る。
TVerでは、初回起動時にユーザーの性別、年齢と郵便番号、興味関心の分野をアンケートし、ファーストパーティーデータとして保有。「ビデオリサーチが保有するパネルデータ(特定の母集団における属性データ)と突き合わせたところ、93.7%という非常に高い正解率を記録した」といい、「ユーザの実際のアンケート回答データを元にしているため、CookieやIDFA(Identifier for Advertisers:広告識別子)への依存もない」と語る。
「さらにTVerではユーザーに対し、興味関心に関するアンケートを行っている」と古田氏。「ビジネス・経済」「自動車」など17項目のなかから関心の高いジャンルを収集し、スマートデバイスとコネクテッドTVにおける広告ターゲティングに活用しているという。
また、コネクテッドTVについては「TVerアプリを一人で利用しているか、複数人で利用しているか」というアンケートデータも収集。「家族などで一緒に同じコンテンツを見る『共視聴ユーザー』に対してもターゲティングが可能」と語った。
■高い完視聴率を活かして「完全視聴(CPCV)課金広告」を導入
「TVerではデバイス問わず、平均95%という高い完全視聴率を記録している」と古田氏。「『どうしても見たいコンテンツがある』というモチベーションでTVerを視聴するユーザーが多く、広告についてもネガティブな感情なくご覧いただいている」。
「もう一つの重要な特徴として、ユーザのみなさんは『音あり』で最後までご覧になっている」と古田氏。「他の媒体では多くがCMが『音なし』で視聴されているのに対し、TVerにおいてはCMも『音あり』での完全視聴率が高いという点が、広告認知においても大きく寄与している」とアピールする。
これを踏まえ、TVerでは2021年10月に、日本の大手媒体では初となる「完全視聴(CPCV:Cost Per Completed View)課金」をリリース。「我々の強みである高い視聴完了率を活かし、広告主様の普及活動に貢献することができる」と語った。
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■「TVer広告×テレビCM」の相乗効果で大きなブランドリフトを創出
さらに古田氏は、「TVer広告」とテレビCMそれぞれにおけるブランドリフト(認知度向上)の比較データを紹介。
「サービス名を聞いて企業名を思い浮かべる『純粋想起』、サービス名を聞いて、知っているブランド名を思い出す『助成想起』ともに、TVer接触だけでも大きなブランドリフトが確認できた」とする一方で、「『TVer広告』とテレビCM両方に接触したユーザーには、さらに大きなブランドリフトが見られた」といい、「『TVer広告』とテレビCMをあわせて利用いただくと、より効果的な結果を得ることができる」とアピールした。
■10月よりTVerでの地上波同時配信が本格スタート。「ログイン機能」も実装予定
最後に古田氏は、TVerの新たな取り組みとして、地上波番組の同時配信の事例を紹介。
2021年10月からは「日テレ系ライブ配信」と題し、日本テレビがプライムタイム(19:00〜23:00)を中心とした番組の地上波同時配信をTVer上で開始。今後、順次対応する放送局が増えていく予定といい、「今まで以上に多くのコンテンツがTVerで見られるようになる」という。
さらに「TVerへの『ログイン機能』の実装を予定している」と古田氏。「この機能によってユーザーにより充実したサービスを提供できるほか、ルールに沿った形で取得したデータを用いた広告配信も今後可能になる」と語った。
「『TVer広告』に関する最新情報は、『TVer広告サイト』にて随時発信中」と古田氏。「問い合わせボタンも付いているので、ご不明な点があれば、ぜひお問い合わせいただければ」と、セッションを締めくくった。