視聴者がドラマの展開を選択 “AI杏寿”の最終回で新たな施策を実施【後編】
編集部
テレビ朝日では、仲里依紗が主演するドラマ『ホリデイラブ』(テレビ朝日系、毎週金曜 23:15~)で、放送内容と連動したLINEアカウント“AI杏寿”の企画を実施しているが、3月16日放送の最終回で、この“AI杏寿”に関連した、ある仕掛けが用意されている。
前編では、“AI杏寿”の取組み、視聴者を放送に結び付ける効果についてお伝えしたが、後編となる今回は、ドラマのクライマックスに向けたこれまでにない新たな施策と、本プロジェクトを活用したさらなる展望について、株式会社テレビ朝日 総合ビジネス局 ビジネス戦略部 中川卓也氏、同社 総合編成局 ドラマ制作部プロデューサー 飯田爽氏、マイクロソフトディブロップメント株式会社 A.I.&リサーチ プログラムマネージャー 中島りか氏に聞いた。
■視聴者が作るドラマストーリー
本プロジェクトでは、毎週金曜のドラマ放送終了後にストーリー展開に沿った"杏寿の悩み相談"をLINE上で届け、その悩みに対する回答を二択から選択してもらいデータ集計を行っていた。これまで、集計結果をユーザーに開示することは行っていたが、
最終回では、第7話放送後に質問した回答結果の、パーセンテージ数が上回った回答のストーリーがドラマ上で展開される。その試みを提案した飯田氏は、「毎週、AI杏寿より悩み相談を持ちかけて、視聴者のリアルな反応をうかがってきた。だからこそ、よりドラマの世界観に没入してもらうためにも、最終回では回答数の多かったストーリー展開を提供したかった」と語る。そのため、どちらの回答結果になってもいいよう、2パターンの撮影が行われたそうだ。
また、これまでは放送後に送信していたAI杏寿のLINEメッセージを、最終回の放送中に送信することも決定した。リアルタイム視聴であれば、ドラマを見ながら突然、入ってくるLINEメッセージにより、一層ドラマの世界観に入り込んでしまうのではなかろうか。
■将来的にはマネタイズも視野に
最後に、今回の事例から見据える今後の展望について3者に尋ねた。
中川氏:今回このような事例もでき、将来的にはマネタイズも視野に入れているが、まずはAIと会話ができて、そこにコアなファンが集まる、まずは“コミュニティーを作る”という部分をもう少し突き詰めてやっていきたい。
飯田氏:テレビを楽しんでもらうプラスαとして双方向コミュニケーションは重要だと思う。今回の最終回で実施するような施策は、今後のこういった双方向企画のヒントになると思う。例えば会話型のAIを活用したドラマとして、探偵AIと会話して事件解決に近づいたり、ユーザーが謎を解いてAIに「犯人」や「動機」などの回答を伝え、その結果をドラマのストーリーに組み入れる、といったことも今後できるかもしれないし、やってみたいと思う。
中島氏:AIを使って今後放送局と「こういった取組みがしたい」とこちら側から要望するというよりは、その業界に精通する方から見てどのようにAIが活用できるかといったシナリオに沿ったお手伝いができればいいなと思う。人と人を繋いだり、番組と番組を繋いだりといった、AIを活用した縁の下の力持ち的な立ち位置で、一緒に業界を盛り上げていきたい。
今回の事例を礎に、今後どのような活用の仕方が同社の制作で行われるのか、その動向に注目したい。
■「AI杏寿」利用方法
コミュニケーションアプリ「LINE」で、QRコードもしくは、「友だち追加」から「AI杏寿」を検索して友だちになる。
■「AI杏寿」公式ホームページ
http://www.tv-asahi.co.jp/holidaylove/news/0005/
※AI「杏寿」はドラマ終了後、3月末にてアカウント閉鎖予定。